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神楽坂 肌と爪のクリニック

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神楽坂「肌爪日記」クリニックブログ
カテゴリ:院長

【専門医のまとめ第4回】巻き爪やさしく解説:根治手術編【元から絶つ・保険適応】

  • 2024.07.17

神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
YouTubeにて『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』も開設しておりますので、
登録がまだという方はぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。

巻き爪シリーズの第3回『簡易手術編』で、即効性と確実性が特徴の簡易手術について解説しました。

巻き爪シリーズ・第4回となる今回は『根治手術』について詳しく説明します。

「根治」とは再発しないように根本から徹底的に治すという意味です。

その名の通り、根治手術は一度受ければ再発することはありません。痛くて辛いだけでなく、再発が多いことでも知られる巻き爪・陥入爪でそんなことが可能なのか・・・

じつは可能なのです。

今回はそんなスゴイ根治手術について、実際の施術動画を交えながら詳しくご説明いたします。ぜひ最後までご覧いただき、ご家族やお友達とも共有していただければ嬉しく思います。

【目次】

1.治療の選択肢

2.根治手術の種類

3.神楽坂肌と爪のクリニックの根治術

4.根治手術の実際を解説

5.手術後の経過

6.根治手術のリスク

7.まとめ


1.治療の選択肢

神楽坂肌と爪のクリニックでは毎日たくさんの患者さんが受診されますが、その内のじつに6割以上が巻き爪の患者さんです。

重症・軽症に関わらず、患者さんが積極的治療をご希望の場合は根治手術かワイヤー矯正を提案し、患者さん自身で選んでいただきます。

■根治手術とは

食い込んでいる爪とその爪母を除去する方法です。特徴は、“再発がほぼゼロ”という根治性と確実性。再発をどうしても避けたいという方やI型陥入爪で簡易手術を何度やっても再発を繰り返してしまう方におすすめします。欠点は術後3日間もの自宅安静が必要なことで速効性に欠ける治療です。

安静と再発率については術式や医師によって異なりますので直接主治医にご確認下さい。健康保険が使えるので費用は8000円程。効果は一生持つため経済的な治療と言えます。

■ワイヤー矯正とは

器具を使って爪の形を整える方法で麻酔や切除は不要です。特徴は、無痛であることと速効性。「痛い手術は絶対いやだ」「3日間の安静はムリ」とおっしゃる方に人気があります。ワイヤー矯正の欠点としては、根治手術と比べて再発が多いことと、保険が効かないので費用が高額なことが挙げられます。

ワイヤー矯正については以下の動画で説明していますが、

次回の『巻き爪シリーズ第5回』であらためて詳しく説明する予定です。

2.根治手術の種類

根治手術には主な術式として「鬼塚法」「児島法」「フェノール法」があります。

■鬼塚法

鬼塚法

鬼塚法は私の恩師でもある鬼塚卓弥博士が考案した術式で、最も一般的な方法です。

シンプルな手術ですが、爪母以外に『側爪郭』という爪の横の皮膚も同時に処理することで再発リスクを下げています。組織損傷がやや大きいことが欠点として挙げられます。

■児島法

児島法

児島法は小さな切開から爪母のみを切除する方法で、鬼塚法同様広く行われています。

組織損傷の少ないため術後の痛みや合併症リスクが軽減されます。欠点は医師にある程度のスキルを要求し、視野が狭く切除が不十分になりやすいところです。

■フェノール法

フェノール法

フェノール法は爪母を切り取る代わりにフェノールという腐食性薬剤で変性させます。

メスを使わないので手術スキルが不要で、当日から歩行できるメリットがあります。欠点は、爪母処理を薬剤の接触時間でコントロールするので不確実になりやすいところです。

なお、これらの術式は医師の責任で選択されるものであって患者さん自身で選ぶことはできません。

患者さんが選べるのは術式ではなく、医師や病院ですので術式が気になる方は事前にホームページなどで調べてから受診するようにしてください。

3.神楽坂肌と爪のクリニックの根治術

実は神楽坂肌と爪のクリニックで行っているのは、先ほどの3つの代表術式とは違う方法です。

部分的Zadik法

部分的Zadik法という独自の方法で、根治性つまり再発しないことを追求した術式です。広い視野から責任爪母を直接、目で確認し、確実に切除します。

手術前
手術後

このため再発がほとんどなく、私は患者さんに再発率は1%以下、ほぼゼロと説明しています。25年前からやっているのですが、10数年前に学会発表しただけで論文にしなかったのでまったく普及していないというのが現状です。

ご覧になっている医師の方でこの術式に興味をお持ちの先生がいらっしゃいましたら、私の著書である最強巻き爪矯正テクニックに詳しい記載がございますのでぜひご一読下さい。

独自の方法ではありますが、私だけで25年以上・2000件以上の実績があります。

現在も、年間に80〜100件ほど行っていますが、ここ10年再発は経験していません。この数字から、再発率のかなり少ない術式と言えると思います。

4.根治手術の実際を解説

実際の施術を動画でご覧いただきます。
※実際の手術の様子は、動画の5:14からご覧ください。

まず、局所麻酔の注射をします。
根治手術では指全体が痛みを感じなくなる指神経ブロックを行います。指には時計でいう2時、4時、8時、10時の方向に神経が走っていますので、根本付近に針を刺したら順番にこれら神経を麻酔していきます。10分経つと手術が可能でそのまま2時間ほど効果がつづきます。その間、指は正座後の足の裏のような痺れた感覚になり、痛みはまったく感じません。

よく「以前の手術で麻酔が効かなかった」とか「医師から麻酔が効きにくい体質と言われた」とおっしゃる患者さんもいますが、じつはそのほとんどは医師の麻酔テクニックに起因するものなのです。経験のある医師が行えば、手術中はまったくの無痛ですのでご安心を。

手術はまず食い込んだ爪を食い込む幅だけ切り取ります。ここは前回の動画で紹介した簡易手術とまったく同じです。

部分的Zadik法では爪の切り取り線の延長線を、指の付け根に向かって皮膚切開します。関節の手前で90度折れてL字型にします。このL字型に後爪郭稜線の切開を繋げて扉の様な形にします。この扉を『皮弁(ひべん)』と言います。

次に皮弁を爪母の深さで剥がして扉を開くように持ち上げると「角(horn)」と呼ばれる爪母の一番奥と側縁が確認できます。ここで爪母を最初に切り取った爪の幅で、一番奥から半月まで骨の深さで切開します。この切開は半月の先で90度折れて、皮弁に連続させます。

次に完全に見えるようになった責任爪母を指先の方から付け根に向かって骨の深さ剥がします。先ほどの爪母の「角」部分は靱帯で骨にくっついているのでしっかり剥がします。「角」はケースによってはかなり深いことがあり、どの術式でも取り残しのリスクが一番高い部分なので特に慎重に行います。最後に残った爪母の一番奥を切り落とせば爪母全体が一塊として完全に取り除かれます。取れた爪母をよく観察し、取り残しが無いことを確認します。

皮膚を縫合して終わりです。時間は一箇所5分位、指の両側だと10分です。ご覧いただいたように出血はほとんどありません。最後に包帯を巻いたら手術した脚を心臓より高くしてベッドで30分休んでいただきます。

5.手術後の経過

フェノール法以外の根治手術は、痛みと出血対策のため術後の安静が非常に重要です。神楽坂肌と爪のクリニックの術後の安静について説明します。

手術後はタクシーか、ご家族が運転する車で帰宅していただきます。
激しい出血や強い痛みの懸念があるため、歩いたり電車で帰ったりすることはできません。

手術当日を含めて、3日間はご自宅で原則横になって過ごしていただきます。その際、手術をした足を心臓より高く保つことが大切です。

基本的に3日間は歩くことはできませんが、トイレなど最低限の移動は可能です。ただし、用が済んだら直ぐにまた足を心臓より高くしなければ出血や痛みが酷くなります。

とうぜん部屋を掃除したり、買い物に出たりはできません。高熱で寝込んでいる状態をイメージして下さい。

ただし、ベッドでなくても、ソファでも床の上で安静にしてもOKです。

手術後3日目の朝からシャワー浴が可能で、キズも洗い流していただきます。

また3日目からはゆっくりですが、キズのある足を庇いながら歩いていただけます。このため、両足同時に手術はいたしません。

7日目には、かなり普通の歩けるようになり、14日目に抜糸します。運動は2週後以降、様子を見ながらゆっくり再開していただきます。

2ヶ月後に再度受診していただき、処理した部分に爪が生えないことを確認したら治療終了。

おめでとうございます。もう二度と、巻き爪に悩まされることもありません。

6.根治手術のリスク

根治手術の効果について説明してきましたが、次にリスクについてご説明します。

「巻き爪・陥入爪の手術はリスクが高いので受けない方が良い」とか「慎重に考えるべき」という記事をネットで読んだことがある方も多いのではないでしょうか?実際に、皮膚科医にはそのように書いている先生が多いですし、日本皮膚科学会の公式ホームページにもそのような記載があります。手術をしても良くならないし、術後にひどく変形することがあるというのが理由です。

一方で私も所属している日本形成外科学会は治療ガイドラインで手術を推奨していますし、整形外科などでも積極的に手術をする先生が多いようです。それは困っている患者さんの症状を、手術以外の方法で改善するのは難しいと考えるからです。

巻き爪の治療が標準化されていないため、ある医師からは手術はリスクが高いので絶対やめた方が良いと説明され、別の医師には手術を勧められる、といったことがしばしば起きて、患者さんは混乱されるだろうと思います。

では、多くの医師が口にする『手術後のリスク』とはどのようなものなのでしょうか?

ここで、そのリスクについて

説明します。

■リスクその1【再発のリスク】

他院で手術を受けた症例

たとえ根治手術であっても、手術が不完全であれば再発することがあります。ほかの病院で、児島法やフェノール法で手術を受けた後に再発してしまい、私が部分的Zadik法で再手術をしたケースはたくさんあります。

私個人の考えでは、再発率の差は術式の選択よりも医師の技術的な差のほうがはるかに大きいと考えています。充分な経験のある医師が行えば、どの術式であっても再発はほとんどしないものです。

つまり、病院を選ぶことである程度コントロールできるリスクとも言えます。

再手術を避けるためには慎重に病院を選び、手術の前に主治医の話を良く聞いてから決断することが大切です。

■リスクその2【爪の見た目が悪くなるリスク】

他院で手術を受けた症例

根治手術は爪の幅を狭くする手術ですが、内側外側の両方の手術や、トランペットネイルでもともと爪幅の狭い方の場合、手術後に爪がとても小さくなって、見た目が気になることがあります。

手術後に気になったとしても、元に戻すことは決してできません。

このリスクは、医師が正しく適応症例を選ぶことでコントロールできます。

予防的手術はしない、カーブが強い場合はワイヤー矯正を検討するなどです。

患者さん側としては手術と矯正など、複数の治療に対応できる病院を選べるかが大切になります。

■リスクその3【爪変形のリスク】

他院で手術を受けた症例

根治手術は比較的組織損傷の大きいので、それが原因で爪が変形してしまうことがあります。一度変形した爪は元に戻すことは出来ません。

私達は他院の巻き爪手術後に酷く変形した爪に対して、冒頭に説明した無爪術、Zadik手術で対応することがあります。

他院手術後変形手術計画
術後半年後

写真の症例は他の病院でフェノール法手術を受けた後に爪が変形した方です。この爪変形は治療が出来ないため、患者さんの希望によりZadik法で爪を生えなくしました。

他院手術後変形
人工爪施術後

別の症例ですが他の病院で児島法手術を受けて爪が変形した方です。治療は出来ませんが、患者さんの見た目を改善して欲しいというご要望により人工爪を付けました

手術後の爪変形は手術による過度の組織損傷や、手術前からあった靴等による爪のダメージが手術で悪化することが原因です。

リスクを小さくするために医師が丁寧な手術を心がけること、手術前から爪の厚みや伸びの遅さがある場合は手術ではなくワイヤー矯正など別の治療を検討する等があります。

また私は15才未満の成長期では変形リスクが高まると考えています。

そのため当院では15才未満の患者さんには根治手術ではなく日常的なケアによる改善や簡易手術をお勧めしています。

根治手術に伴うリスクについて説明しました。

医師はリスクの説明はできますが、代わりにとってあげることは決してできません。リスクを受け入れるか、受け入れないかの判断は患者さん自身の責任でもあります。

ご自身の症状の改善とリスクを天秤にかけてじっくり慎重に検討して下さい。

7.まとめ

今回の動画では巻き爪の根治手術について説明しました。再発に強いという大きなメリットをお分かりいただけたかと思います。

一方で、もう一つの選択肢ワイヤー矯正についてもっと知りたいという方も多いのではないでしょうか。

次回の巻き爪シリーズ第5回では巻き爪の『ワイヤー矯正治療』について取り上げますのでぜひご覧下さい。

尚、神楽坂肌と爪のクリニックで治療をご希望の方は、当院ホームページの問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

ご相談、お待ちしています。

お電話でのご予約・お問い合わせ

電話なら当日予約可能。突然の痛みや手術希望にも可能な限り対応いたします。

5日以内で来院希望の方は電話でお申し込み下さい。

03-3513-8212

【平 日】10:00~13:00/14:00~19:00 【土曜日】9:30~12:30/13:30~18:30

ご予約・お問い合わせ

【記事監修・執筆】

医師 医学博士 院長 野田 弘二郎

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
  • プロネイリスト
  • ミラドライ公式認定医
  • オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
  • パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
  • 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員

<詳しいプロフィールはこちら>

【専門医のまとめ第3回】巻き爪やさしく解説:簡易手術編【肉芽に確実&即効】

  • 2024.06.07

神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
YouTubeにて『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』も開設しておりますので、
登録がまだという方はぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。

巻き爪シリーズの第2回『治療総合編』で、巻き爪手術について簡単に触れました。

そこで今回は、手術治療の中で一番シンプルな簡易手術について詳しく説明したいと思います。

手術というとなんだか怖い感じがするかもしれませんが、肉芽がある場合でも手術の翌日から痛みなく歩けるようになり、旅行もできます。何年も悩みつづけた肉芽がわずか数日で消えてなくなります。

今回はそんなスゴイ簡易手術について、詳しく説明いたします。ぜひ最後まで読んでいただき、「そうなの?」「知らなかった!」という気づき・発見がありましたら、ご家族やお友達とも共有していただければ嬉しく思います。

【目次】

1.巻き爪手術 二つの方法

2.各手術の特徴

3.肉芽とは何か?

4.簡易手術と手術以外の肉芽治療との比較

5.簡易手術が向いている患者さんとは

6.簡易手術の実際を解説

7.簡易手術後の経過

8.まとめ


1.巻き爪手術 二つの方法

上記のとおり、巻き爪の手術には【簡易手術】と【根治手術】の二つがあります。イラストにあるように簡易手術では食い込んでいる爪のみを除去し、根治手術は食い込んでいる爪とその爪を作っている爪母を除去します。

<簡易手術について>

簡易手術は、速やかに痛みを取ることを目的とします。
速効性と確実性が特徴で一般的には部分抜爪とか陥入爪手術(簡単なもの)と呼ばれます。

<根治手術について>

根治手術は、再発させないことを目的とします。
根治性が特徴で、『鬼塚法』や『児島法』などの術式があります。

2.各手術の特徴

患者さん目線での、二つの手術の違いについて説明します。
ここでの数字データは施術する医師によって大きく異なりますので参考までにご覧下さい。神楽坂肌と爪のクリニックでは赤字の数字で患者さんに説明しています。

典型症例簡易手術

簡易手術は30秒しかかからず、安静期間は当日のみ。翌日から痛みなく歩くことができます。もっと言えば、走ることさえできます。この速効性と確実性こそが簡易手術における最大のメリットと言えるでしょう。
一方でデメリットは再発に弱いこと。爪を作る爪母を除去しないため、爪は1年程で元通り生えるからです。約半数で再発し、もっとも早いケースでは半年で痛みがでることがあります。このため、応急的処置とも言えますが、そのまま治ってしまうケースもあります。

典型症例根治手術

根治術は、簡易手術とは逆に再発がほぼゼロですが、術後3日間の自宅安静が必要で速効性という面で劣ります。病院によっては、入院でおこなうこともあります。スケジュール調整など事前の準備も必要なため、気軽に受けられる治療ではありませんが、簡易手術をやっても半年など短い期間で再発を繰り返すような場合には根治手術への切り替えをおすすめしています。

状態に応じて手術を使い分けることがとても大切ですので、複数の手術を行っている医療機関で治療を受けられることをおすすめします。

ちなみに、ずっと昔におこなわれていた爪をすべて取り除く「抜爪術」は、現在ではほとんどおこなわれません。

3.肉芽とは何か?

肉芽

巻き爪・陥入爪でできる、あの痛い「肉芽」とはいったい何でしょうか?

肉芽とは、赤いゼリーのようなもろく柔らかい肉の塊で、『不良肉芽』や『血管拡張性肉芽腫』などとも呼ばれます。

深爪や靴の圧迫により、爪が皮膚に刺さってできた小さなキズが、肉芽発生のきっかけになります。そこに爪の刺激がつづいたり、手当が悪くてキズの治癒が邪魔されたりすると肉芽が盛り上がってきます。歩くたびに爪が刺さる痛みがあり、いつまでも汁や出血がつづくなど、たいへん不快なものです。

あまりに痛みがひどくなると、まともに歩けなかったり、靴が履けなくなったりすることもあります。

4.簡易手術と手術以外の肉芽治療との比較

肉芽があって医療機関を受診した場合、先ほど説明した手術より、むしろ以下のような治療を提案されることが多いと思います。

◎内服薬、外用薬
◎テーピング
◎液体窒素による冷凍凝固
◎ガター法
◎人工爪

内服薬・外用薬やテーピングは、軽症例を除いて単独で肉芽を治療することは困難です。

冷凍凝固は痛みが強く効果が不安定で、繰り返し施術が必要なことが多いです。

ガタ―法(左)・人工爪(右)

ガター法や人工爪は、手術同様に麻酔が必要なわりに信頼性に欠け、効果も限定的です。

いずれの方法においても、たとえ肉芽が治ったとしても治癒まで数週間もの間痛みが続きます。そうなると治療で治ったのか、自然治癒力で治ったのかもわかりません。

これら手術以外の治療は、爪には触れずに肉芽自体をなんとかしようとしているのですが、肉芽の原因になっている爪の刺激がなくならないのでなかなか改善しないのです。肉芽治療の大原則はキズへの刺激を取り除くことと、治癒環境を整えることです。

そのために簡易手術をして術後正しく処置をすれば、肉芽は10日程で自然に縮んでなくなります。速効性・確実性から肉芽治療においては、簡易手術に圧倒的なアドバンテージがあると考えています。

5.簡易手術が向いている患者さんとは

先ほどから繰り返している速効性・確実性ですが、なぜそんなに大事なのでしょう?

それは、肉芽のある患者さんのなかには、何ヶ月も自分で、あるいは他の病院で治療をしていながら一向に良くならず、大切なイベント直前になって『神楽坂肌と爪のクリニック』に飛び込んでこられた方が非常に多いからです。以下は、私が実際に経験した患者さんの例です。

[CASE.01]翌日にディズニーランドを子供連れで、一日中歩き回るというお母さん

[CASE.02]翌日から修学旅行で沖縄へ出発するという高校生

[CASE.03]明後日に海外出張が迫っているというビジネスマン

[CASE.04]3日後の運動会のリレーで、アンカーを走るという中学生

[CASE.05]翌週に自身の結婚式でハイヒールを履くという女医さん

など。

このような患者さんでは、速やか、かつ確実に治療して差し上げないと、大切な予定を台なしにしてしまうかもしれません。治療する側の責任も、たいへん重いものです。今回の記事をご覧いただいている方なかに医師の方がいたら、ぜひ考えてみてください……。このような患者さんのために、我々医師はなにができるでしょうか。先生だったら、どうしますか?

私がこれらすべての患者さんにおこなったのは、簡易手術でした。そして幸いにも、全員が無事に痛みもなく大切な予定を終えることができました。もちろん、大切な予定がなかったとしても辛い肉芽というのは一日でも早く治したいものです。

悩んでいる方は、あまり我慢せずに早めに医療機関で相談して下さい。すでに治療中で経過が芳しくないという方は、他の医療機関でも相談されることをおすすめします。1ヶ月通って肉芽が良くならなければ、そのまま続けてもあまり期待できないと思います。

6.簡易手術の実際を解説

※実際の手術の様子は、動画の7:25からご覧ください。

まず局所麻酔の注射をします。
指先に直接針を刺したりすると激痛なので、我々は『ウイングブロック』という方法をおこなっています。この方法は、爪の付け根と関節の中間地点あたりの感覚が鈍い部分から針を刺します。針先を足の裏に向けて、指の裏側を走っている指神経と血管の束周辺、そこから爪側に伸びている細い神経の枝の周囲に麻酔薬を注入していきます。熟練した医師がおこなえば爪の半分が完全に無痛となりますので、その後の施術で痛みを感じることは全くありません。

次に爪が皮膚に食い込んだ部分を5~8ミリの幅で皮膚から剥がします。

この時に使う器具がとても重要で、私たちは刃が薄く、刃先剛性の高い特殊なハサミを使っています。見た感じは痛そうに見えますが、先ほども書いたように施術中の痛みはゼロ、軽い圧迫感を感じるだけです。次にハサミを使って、剥がした部分で爪に切れ目を入れます。この時に、爪の下にある爪床・爪母と呼ばれるところを傷つけないことがとても大切です。傷つけてしまうと術後の出血が多くなったり、将来的に爪に亀裂が生じる原因となったりするからです。

最後に、切れ目を入れた爪を先の細い道具で掴んで指の中心に向かって捻り、そっと引き抜きます。間違ってもまっすぐ強引に引き抜いてはいけません。抜き方が悪いと爪周辺の組織を損傷し、術後の出血と痛みが激しくなります。手術は一分もかからず終わり、この後5分ほどキズを抑えて止血します。

抜いた爪を見ると、表面から見えていたよりもかなり深く刺さっていたことがわかります。

7.簡易手術後の経過

手術後2時間程度は麻酔が効いた状態なので、歩いても痛みはまったく感じませんが、出血することがあるので寄り道せずにまっすぐご帰宅していただき、

当日は自宅で安静していただきます。

当日からシャワーを浴びることができ、患部を洗い流すこともできます。清潔なタオルで水分を取ったら、軟膏をつけたバンドエイドでそっと保護します。

翌日から痛みをほとんど感じることなく普通に歩くことができます。手術の前のように、歩くたびに爪が肉芽をチクチク刺激することがなくなるからです。

一週間後に再度診察していただき、痛みがなくなっていることを確認します。

当院では簡易手術を年間180件ほどおこなっていますが、一週間後の時点で痛みが取れていないケースはゼロであり、過去数千例で直後に手術をやり直した経験はありません。

この確実性と即効性は、医師にとっても患者さんにとってもたいへん大きな魅力です。実際に一度、簡易手術を受けた患者さんが再発時に再度施術を希望されるケースは非常に多いです。

8.まとめ

巻き爪シリーズ第3回の今回は『簡易手術』について説明させていただきました。

簡易手術のメリットがご理解いただけたかと思います。次回は、一度受ければ再発することのない『根治手術』について詳しくお話しさせていただきますので、どうぞご期待ください。

尚、神楽坂肌と爪のクリニックで治療をご希望の方は、当院ホームページの問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

ご相談、お待ちしています。

お電話でのご予約・お問い合わせ

電話なら当日予約可能。突然の痛みや手術希望にも可能な限り対応いたします。

5日以内で来院希望の方は電話でお申し込み下さい。

03-3513-8212

【平 日】10:00~13:00/14:00~19:00 【土曜日】9:30~12:30/13:30~18:30

ご予約・お問い合わせ

【記事監修・執筆】

医師 医学博士 院長 野田 弘二郎

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
  • プロネイリスト
  • ミラドライ公式認定医
  • オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
  • パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
  • 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員

<詳しいプロフィールはこちら>

【専門医のまとめ第2回】巻き爪やさしく解説:治療総合編【病院選びと治療法】

  • 2024.04.26

神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
YouTubeにて『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』も開設しておりますので、
登録がまだという方はぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。

さて、前回は巻き爪シリーズの第1回として「巻き爪とは何か?」について説明しました。

そこで、第2回では『治療総合編』として病院の選び方と巻き爪治療の全体像についてお話しさせていただきます。ぜひ最後までご覧いただき、共感いただけましたらご家族やお友達との会話に話題として取り上げていただき、また共有していただければ嬉しく思います。

【目次】

1.巻き爪はどの科を受診すれば良いか?

2.巻き爪治療の矛盾

3.巻き爪治療を受ける病院の選び方

4.病院選びの注意点

5.巻き爪の治療法にはどのような方法があるか?

6.補助的治療法の種類

7.積極的治療法の種類

8.まとめ


1.巻き爪はどの科を受診すれば良いか?

さて、皆さんは巻き爪で病院に相談するとしたら何科を受診しますか?

皮膚科でしょうか?整形外科?あるいは形成外科?

皮膚科でしょうか?整形外科?あるいは形成外科?

はい、どれも正解です。

■皮膚科:皮膚・毛・爪病変を扱う科
■整形外科:指先の再建を扱う科
■形成外科:皮膚・毛・爪の手術、指先の再建を扱う科

爪の病気は、皮膚科医が治療にあたるのが一般的です。
なぜなら、爪は毛とおなじで皮膚の角質が変化したもの、つまり皮膚の一部だからです。また、指先の怪我というのは整形外科医や一般外科医で治療しますので、巻き爪治療も行うことがあります。
そして医師数としては少ないのですが、私のような形成外科医も巻き爪の治療をします。

大勢の医者

このように巻き爪はいろいろな科で治療をしてもらうことができます。

「ということは、巻き爪は治療環境に恵まれた治しやすい病気なのでは?」

いえ、治療環境に恵まれているどころか、なかなか良くならずに困っている方が沢山いらっしゃるのが巻き爪なのです。

YouTubeやブログなど、ネット上には巻き爪治療に関する情報が溢れかえっていることが、その証と言えるでしょう。この記事をご覧の方もそうしたお一人かもしれません。

2.巻き爪治療の矛盾

ではなぜ、このような矛盾が起きるのでしょう?

大空を飛ぶ鳥

その最大の理由は「爪医療」が医学の世界では非常にマイナーな分野であるということです。そのため巻き爪には標準治療というものが存在せず、私のような専門とする医師もほとんどいません。各医師がそれぞれの考えと経験で治療にあたり、その熱意の温度差も大きいのが現状です。

また、巻き爪治療で良い結果をだすためには

医師スキル

解剖学的知識や診断能力など爪自体への深い理解だけでなく、創傷治療の知識や麻酔・手術といった外科的スキルが欠かせません。これらをすべてカバーする医師はあまり多くないため、治療レベルに差がでてしまします。

もうひとつの理由として、指先は痛みを強く感じるので

不安な女性

治療への恐怖から“患者さんが病院受診を敬遠しがち”ということもあります。過去に適切な痛み対策をされずに処置を受け、それでも改善しなかったというような辛い経験がトラウマになっているケースも多く、受診の遅れが症状の悪化、慢性化に繋がっているのです。

このように巻き爪は安定的に良い治療結果をだすのが意外と難しい病気なのです。では、どうすればいいのか。そこで大切になるのが『病院選び』ということになります。

3.巻き爪治療を受ける病院の選び方

最短で最善の結果に到達するには、いきなり手近の病院を受診するのではなく、事前にしっかりと情報収集をして病院を選ぶことがなにより大切です。ほとんどの医療機関がホームページで診療情報を公開していますので、

グーグル検索

「地域名+巻き爪+治療」といったキーワードでネット検索して候補を5つくらいに絞ります。候補が見つからない場合は地域をお住まいの都道府県全域などに拡大して再度検索しましょう。

次にホームページの内容をチェックして、

ホームページ
https://www.hadatotsume.com/wire/ より

巻き爪の治療内容や症例写真を積極的に公開している病院を有力候補にすると良いでしょう。その情報量は医師の巻き爪への取り組みかたと直結しているからです。ここから先は実際に受診してみないと分かりません。まずは一番の有力候補の病院で相談してみましょう。

自信のある医師

巻き爪治療に熱意を持っている医師であれば、辛い痛みに真剣に向き合ってくれるはずです。もし、そこで提案された治療が「希望とは違うな」と感じたら他の医師の説明も聞いてみましょう。

医師への遠慮は無用です。

自信を持って治療に取り組む医師であれば、他と比較されることをむしろ歓迎するはずですからね。治療中でも、経過が思わしくないと感じたら早めに他の医師へ相談しましょう。それが、治癒への早道であることも多いからです。-

4.病院選びの注意点

病院選びの基準についてはお分かりいただけたと思いますが、ひとつ気をつけていただきたいことがあります。ネットで「巻き爪を治療してくれる医療機関」を検索しているつもりでも、検索上位に接骨院・治療院やフットケアサロンなどが表示されることがあるということ。

ニセ医者

これらは医療機関ではないのにも関わらず、店名が○○院とか○○クリニックであるとか、医師のような白衣を着た「院長」「ドクター」が登場するので、たいへん紛らわしいです。

医療機関のホームページには院長の経歴が載っていますので医学部卒業した医師であることを念のため確認して下さい。
医療機関では患者さんの体験談を掲載することは禁止とされています。(医療法における病院等の広告規制)
そのため、もし体験談が掲載されている場合は治療院やお店であると判断できます。あとは、ネットクチコミ。不自然なくらい5つ☆ばかりなのも特徴なので注意が必要です。

5.巻き爪の治療法にはどのような方法があるか?

医療機関では軟膏から手術まで幅広い治療が行われています。

これらを整理すると大きく『補助的治療法』と『積極的治療法』に別けることが出来ます。

■補助的治療法とは

爪周辺の皮膚や皮下組織に直接的、間接的に働きかけることにより局所の安静を図り、痛みを軽減する方法です。薬、テーピング、肉芽焼灼など多数の方法があり、一部を除けば患者さん自身でおこなうことができます。あくまでも補助的に用いられる方法ですが、軽症例であればこれだけで改善することもあります。

■積極的治療法とは

爪そのものに働きかけることにより炎症をコントロールして痛みを取り除く方法です。具体的には手術法と矯正法があり、一部を除き医師が行います。補助的治療では十分な効果が期待できない場合に選択される、より確実性の高い方法です。

※これらを複数組み合わせておこなうこともあります。

6.補助的治療法の種類

■自宅でおこなうもの(自分でできること)

・安静:靴やストッキングによる圧迫を避ける、散歩や運動を控える
・清潔:石鹸と湯で日に1-2回洗う
・テーピング:食い込んだ皮膚を引っ張って爪の刺激を和らげる
・コットンパッキング:コットンを詰めて隙間を作り爪の刺激を和らげる
・薬:化膿や炎症をコントロールして腫れを抑える

先ほど説明したように、補助的治療法とは爪周辺組織に働きかける方法です。そのなかで主に自宅でおこなうものとして、安静、清潔、テーピング、コットンパッキング、内服薬服用、外用薬塗布などがあります。具体的なやり方については過去の記事・動画「爪の専門医が教える、陥入爪のホームケア7選!」で詳しく取り上げていますのでぜひご覧下さい。

■医師がおこなうもの

・肉芽焼灼:-200度の液体窒素で肉芽を繰り返し凍らせて小さくする

液体窒素

・ガター法:爪の側縁をカバーで覆って皮膚への刺激を和らげる

ガタ―法
他院の施術例

・人工爪:深爪を樹脂製で延長しての爪を皮膚への刺激を和らげる

人工爪
他院の施術例

補助的治療法には医師が行うものがあり、肉芽焼灼、ガター法、人工爪があります。炎症が高度で肉芽という赤い肉の塊が生じているような重症例に行わることがあります。

<肉芽焼灼>

マイナス200度の液体窒素を染みこませたコットンを肉芽に押し当てる治療です。冷凍凝固により肉芽表面が壊死するので、これを繰り返して肉芽を小さくしていきます。設備やスキルを必要とせず広く普及していますが、施術の痛みや結果の不安定さが欠点です。

<ガター法>

爪の縁に樹脂のカバーを縫い付けることで皮膚への食い込みをやわらげる方法です。補助的治療法に分類しましたが麻酔が必要なので手術に準じた方法といえます。

<人工爪>

深爪を樹脂で延長することで皮膚への刺激を和らげる方法です。
条件の悪い部位でうまく硬化させるのは難しく、またHEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)という刺激性の強い薬剤を傷口に使うことには安全性に疑問が残るなど問題もあります。

なお神楽坂肌と爪のクリニックでは、これらの3つの治療は行っていません。

これは私個人の考えですが、これらは施術の痛みが強く時間もかかるわりには効果が不安定かつ限定的であり、即効性と確実性において手術のほうが優れているからです。

7.積極的治療法の種類

積極的治療法は爪自体に働きかけて皮膚への刺激を和らげる方法で、手術法と矯正法があり、手術法には根治的手術と簡易手術、矯正法にはワイヤー矯正やクリップ矯正等があります。

<手術法>

爪の一部を切り取り、矯正法は器具を使って爪のカーブを整える方法です。

根治手術前
根治手術前
根治手術後
根治手術後

手術法は古くからおこなわれており、健康保険が使えるため現在でも主力の治療として全国の医療機関で受けることができます。

<矯正法>

ワイヤー矯正前
ワイヤー矯正前
ワイヤー矯正後
ワイヤー矯正後
クリップ矯正
クリップ矯正

爪の一部を切り取り、矯正法は器具を使って爪のカーブを整える方法です。

矯正法は25年ほど前に登場した比較的新しい方法。健康保険が使えないため、都市部を中心とした一部医療機関でおこなわれています。普及はこれからで、お住まいの地域によっては近くで見つけられないかもしれません。ただ通院は1~2ヶ月に一度なので、私達の神楽坂肌と爪のクリニックには新幹線や飛行機で通院されている患者さんもいらっしゃいます。

あとこれはよくある誤解ですが、重症だから手術、軽症だから矯正と言うことではありません。重症でも矯正が向いているケースもありますし、軽症でも患者さんの希望があれば手術を選択することもあるからです。

8.まとめ

巻き爪シリーズ第2回では、治療全体についてザックリとお話しさせていただきました。

ご紹介した治療法はすべての医療機関で行われている訳ではありませんが、可能であれば複数の治療法から選択できるような体制を整えている病院で相談されることをお勧めします。

次回からは『各治療法』について更に詳しく説明していきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。次回もお楽しみに!

尚、神楽坂肌と爪のクリニックで治療をご希望の方は、当院ホームページの問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

ご相談、お待ちしています。

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電話なら当日予約可能。突然の痛みや手術希望にも可能な限り対応いたします。

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【平 日】10:00~13:00/14:00~19:00 【土曜日】9:30~12:30/13:30~18:30

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【記事監修・執筆】

医師 医学博士 院長 野田 弘二郎

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
  • プロネイリスト
  • ミラドライ公式認定医
  • オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
  • パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
  • 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員

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【専門医のまとめ第1回】巻き爪やさしく解説:基礎編【原因と種類、似ている病気】

  • 2024.04.04

先生こと『神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
YouTubeにて『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』も開設しておりますので、
登録がまだという方はぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。

さて本日は、当院で一番ご相談の多い『巻き爪』についてお話しします。

巻き爪に関してはお話ししたいことが非常にたくさんあり、
とても一回では伝えきれません。
そこで数回に分けてシリーズでやっていきたいと思います。

第一弾となる今回は
「巻き爪とはどんな病気か?」
というテーマでお話しします。

現在、巻き爪で悩まれている方に、まずはご自身の巻き爪がどういうものなのかを知っていただきたい。ぜひ最後までご覧いただき、共感いただけましたらご家族やお友達との会話に話題として取り上げていただき、また共有していただければ嬉しく思います。

【目次】

1.巻き爪・陥入爪とは

2.巻き爪の原因

3.巻き爪の種類

4.巻き爪に間違われやすい病気

5.まとめ


1.巻き爪・陥入爪とは

巻き爪とは

“爪が食い込んで痛みがでる病気”

であることは皆さんご存じかと思います。これとは別に『陥入爪』という呼び方を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
爪が食い込んで痛い状態を指す病名が二つある。これが混乱の元となっていますので、まずは『巻き爪』と『陥入爪』の違いを説明します。

実は二つは定義の異なる別の病名なのです。

実は一部を院長が執筆

世界的に有名な形成外科医で私の恩師でもある鬼塚卓彌博士が書かれた「形成外科手術書」という国内でもっとも権威のある専門書で調べてみると、

「陥入爪は爪が彎曲(わんきょく)して皮膚にめり込んだもの」

と定義されています。英語病名のingrown nailを鬼塚先生自身が日本語訳されたものです。
一方で巻き爪は別の病気として陥入爪とは違うページで紹介されており

「巻き爪とは陥入爪の中で爪の端が垂直を超えて巻いたもの」

と書かれています。

いかがですか?なんだかほとんど同じようにも思えますよね。同業医師のなかにはこの二つの病気は厳密に区別しなくてはならないと主張される先生もいらっしゃいますが、実際に患者さんを診察してみると、陥入爪の患者さんの多くで爪が巻いています。つまり巻き爪であることが多いのです。また、巻き爪の患者さんの多くで爪がめり込んでいます。つまり陥入爪の状態でもあるのです。

ということは二つの言葉は概ね同じ病像を指していると言えるのです。さらには陥入爪と巻き爪の治療法は、ほとんどが重複しています。こうしたことから私は、皆さんにも馴染みのある「巻き爪」という病名で統一した方が良いと考えています。実際に患者さんへの説明は、巻き爪という言葉を使うようにしています。

実はこの件、私自身の著書の中で陥入爪の名付け親である鬼塚先生から
「巻き爪で統一して良い」というお墨付きをいただいております。
今後、私のブログでは巻き爪で統一したいと思います。
ひとつ問題なのは、健康保険の診療報酬点数表にはいまだに「巻き爪」という用語がなく「陥入爪」という病名だけが使われていること。そのため私の説明の中に一部に陥入爪と言う言葉が入ってしまうことがありますが、巻き爪と同じ意味だとご理解ください。

2.巻き爪の原因

毎日多くの巻き爪患者さんを診察していますと「巻き爪になった原因が知りたい」というご質問をよくいただきます。靴の圧迫が原因になりやすいことはご存じかと思いますが、なかには思い当たる節がないという方もいらっしゃいます。そう、巻き爪は圧迫以外にもさまざまな原因で生じる可能性があるのです。いくつかグループに分けて説明したいと思います。

こちらの動画も、ご参考ください。

【圧迫のグループ】

■履物による圧迫:パンプス、タイツ、ストッキング、五本指靴下、足袋

■隣接組織による圧迫:大きすぎる靴で足が横ブレ、脇の肉(側爪郭)の盛り上がりが

大きい、外反母趾で隣の指がのしかかる、太鼓バチ指、爪周辺の腫瘍

はじめに圧迫のグループ。履物による圧迫はもっとも多い原因ですが、パンプスだけではなくストッキングやタイツも多いです。意外かもしれませんが逆に大きすぎる靴にもリスクがあります。靴の中で足が横ブレし、爪の横の肉によって繰り返し圧迫されるので要注意です。やはり、足にフィットした靴選びを心掛けることが何よりの予防策となるでしょう。

【関節や加重の問題のあるグループ

■関節の異常:外反母趾、関節リウマチ、先天性内反足、下肢麻痺

■荷重の異常:外反母趾で母趾が垂直に着地できず加重が偏る、浮き指、寝たきり

関節や荷重の問題のあるグループ。アライメント異常(アライメントとは骨・関節の配列のこと)とも言います。特に外反母趾で母趾が垂直に加重できなくなっている方は多いです。

≪先天的に巻き爪リスクの高いグループ≫

■爪や指の形:幅広い爪、末節骨が短い又は長い、中足骨が短い、クロウトゥ

先天的に巻き爪リスクの高いグループ。中でも爪の横幅が広いというケースは多いです。

≪その他のグループ≫

■爪甲剥離:外傷、爪白癬、抗がん剤

■その他:深爪や爪むしり、血管病変(慢性動脈硬化症、糖尿病性末梢血流障害)

■不明

他にこのようなことも原因になります。爪甲剥離といって爪が肉から浮き上がること、深爪や爪をむしる癖、慢性的な血管の病気でも生じることもあります。また、二つ以上の原因が同時に巻き爪を起こしていることもありますし、原因がはっきり分からない方もいらっしゃいます。このように巻き爪というのは、爪以外のさまざまなことが原因になっていることが多く、それこそが巻き爪が再発しやすい理由にもなっています。

3.巻き爪の種類

では、巻き爪にはどのような種類があるのでしょうか。巻き爪の分類法はさまざまあるのですが、私たちは指先の方向から見たときの爪の形によって主に3つの種類に分けています。それがC型、ステイプル型、I型です。ぜひ、ご自身の爪と見比べながらご覧ください。

■C型について

C型はアルファベットのCの形で、一番多いタイプです。とくに20代~40代の女性に多く、ハイヒールやストッキングの圧迫が原因になりやすいのが特徴です。治療法としてはワイヤー矯正が向くケースが多いです。

■ステイプル型について

2番目に多いタイプがステイプル型。見た目はカタカナの「コの字型」で中央部分に変形がありません。変形が内側か外側どちらかだけのハーフステイプル型もあります。こちらは比較的男性に多く見られます。治療法はワイヤー矯正・手術のどちらにも向いています。

■I型について

I型はアルファベットのIの形で変形がほとんどないのが特徴。もともと爪の幅の広い人に見られ、爪の刺激による肉芽や出血といった激しい症状であることが多いです。また、私たちのクリニックへ来る前にさまざまな治療を試したけれどダメだった、という方が多く、難治性・治療抵抗性も特徴のひとつとなっています。そのため治療としては手術が向いています。私の経験上、足の多汗のある患者さんが多いです。

■その他

そのほかの特殊な形としては、トランペットといってC型から変形が進んで1周巻いたり、さらに巻いて「のの字」になった形、デルタ型といって指先から見た時にアルファベットの逆V字の形、折り返し型といってステイプル型から変形が進んで折りたたまれたようになった形もあります。治療法は、トランペット型とデルタ型はワイヤー矯正、折り返し型は手術が向いていることが多いです。

4.巻き爪に間違われやすい病気

巻き爪は足の指先が痛いのが特徴ですが、ほかの病気でも似た症状になることがあります。当院には「ほかの医療機関で治療を受けているが、まったく良くならない」という方もたくさん受診されます。なかにはそもそも巻き爪ではなく、まったく別の病気が見つかる方もいらっしゃいます。巻き爪に間違われやすい病気とはなにか?次のようなものがあります。

■爪白癬(つめはくせん)

爪が白癬菌に感染して厚くなり、その厚みで痛みがでることがあります。巻き爪に合併することも良くあります。

■爪の生え替わりに伴う痛み

怪我で爪の下に広範囲の内出血を起こすと、爪が剥がれて新しい爪が伸びてきます。新しい爪が先端到達するまでには1年ほどかかりますが、その爪が先端に届くあたりで痛みがでることがあります。巻き爪と違って繰り返さないのが特徴です。

■グロームス腫瘍

爪の下にできるおできで強い痛みがでることがあります。手指に多いのですが、足の親指にでたことで巻き爪と間違って治療されているケースがあります。爪の中央、半月近くを押すと痛くなることが多いです。

■爪下外骨腫(そうかがいこつしゅ)

爪の下の末節骨から骨が伸びて爪を押し上げる病気です。痛みがでたり、肉芽が出来たりして巻き爪と区別が難しいことも。爪を上から押すと爪の裏に痛みを感じるが多いです。

■後爪郭爪刺し(こうそうかくぶつめさし)

靴の圧迫で血液循環が悪くなることで爪の成長が遅くなり、爪の付け根、後爪郭というところに痛みがでます。爪が痛いので巻き爪として治療を受けているケースがあります。

■爪甲鉤弯症(そうこうこうわんしょう)

怪我や慢性的な圧迫の後で爪の伸びが遅くなり厚くなります。痛みはないことがほとんどですが、たまに親指の爪、付け根の小指側が靴で押されて痛くなることがあります。治療が極めて難しく、確立された治療法がまだ見つかっていないのが現状です。

■ひょう疽(ひょうそ)

爪の周辺にバイ菌が入って化膿した状態のこと。爪が食い込んで痛むわけではないのですが、症状が紛らわしいことがあります。

このような病気を診断するのは、専門的な医師でなければと難しいことがあります。皆さんは「巻き爪」と思っていても、そうではない病気の可能性があることを知っておいて欲しいと思います。

5.まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。巻き爪シリーズ第一回。いかがだったでしょうか?次回以降は「巻き爪の治療について」詳しく説明していきたいと思います。ちょっとした空き時間などで、ブログをチェックしていただけると幸いです。次回のブログも、乞うご期待を!

尚、神楽坂肌と爪のクリニックで治療をご希望の方は、当院ホームページの問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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【保険適応】先天性耳垂裂の手術【ビフォー・アフター】

  • 2024.03.01

肌爪先生こと『神楽坂肌と爪のクリニック』』の院長、野田弘二郎です。
YouTubeにて『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』も開設しておりますので、
登録がまだという方はぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。

ピアスの耳垂裂については以前ブログで取り上げた際に、たくさんの反響をいただきました。

そのなかで『先天性耳垂裂』、つまり生まれつきの耳垂裂で悩んでらっしゃる方から、「先天性については情報が少ないのでブログのテーマとして取り上げてほしい」というリクエストが。

ハッと思い、すぐさまネットで検索してみたところ、確かにネット上にはほとんど情報がなく、あったとしても文章でさらっと触れているくらい。具体的な治療法や症例写真さえないものがほとんど。専門家として、もう少し早く気づくべきでした。申し訳ありません。そこで今回は『先天性耳垂裂』の治療について詳しく解説していきたいと思います。

【目次】

1.先天性耳垂裂(じすいれつ)ってなに?

2.なぜ耳たぶが裂けるの?

3.耳たぶの裂け方の違い

4.耳垂裂の治療

5.治療費は?健康保険が使えるの?

6.どこで手術が受けられるの?

7.どんな手術なの?

8.手術の実際と術後の経過

9.まとめ


1.先天性耳垂裂(じすいれつ)ってなに?

副耳
耳瘻孔
耳垂裂

先天的な耳の異常として比較的よく見られるのが福耳、耳瘻孔、耳垂裂です。 これらは数百人に一人の割合で発生すると言われています。

先天性耳垂裂
外傷性耳垂裂

耳垂裂(じすいれつ)とは耳たぶが裂けた状態を意味する医学用語です。
原因別に生まれつきの『先天性』と、外力による『外傷性』に別けられます。

※ピアスによる外傷性耳垂裂については過去のブログでも取り上げていますので、気になる方はコチラを是非ご覧ください。

2.なぜ耳たぶが裂けるの?

伸びた穴と裂けた穴

外傷性耳垂裂のじつに99%以上がピアスかぶれによるものです。
原因としては、ピアスの素材に含まれるニッケルやクロムといった金属がかぶれを引き起こし、それを繰り返すうちに穴が徐々に伸びていき、やがて裂けるというもの。

先天性耳垂裂

一方で、先天性耳垂裂は耳たぶが形作られる妊娠初期、1~2ヵ月頃に何らかの異常があり、耳たぶがくっつかないことで生じます。

先天性耳垂裂

つまり裂けているように見えて裂けている訳ではない。本来くっつくべき部分がくっつかないことで、裂けた状態に見えるということです。その直接の原因はわかっておらず、新生児数百人に一人の割合で見られます。

3.耳たぶの裂け方の違い

外傷性の様々な裂け方

先天性と外傷性は裂け方に違いがあります。外傷性は多くの場合、単純な直線的な裂け目です。ピアスをたくさんあけた方では、裂け目が複数あったり、それらが繋がったりしていることもあります。

先天性の様々な裂け方

一方で先天性の場合は、しばしば裂け目が大きく広がっていたり、耳たぶにねじれがあったり、耳たぶが部分的に欠けていたり、形としてはより複雑でその分手術も難しくなります。

4.耳垂裂の治療

先天性と外傷性、どちらも耳垂裂の治療は手術になります。
先天性耳垂裂は「小児のうちに入院し、全身麻酔手術を受けた」という方もいらっしゃいますが、15歳以降であれば局所麻酔の比較的簡単な手術で治療できるので、医師から「成長を待ってから治療してみては」と説明されている方も多いです。しかし、稀に変形や欠損が大きい方もいらっしゃいます。その場合は『成人でも入院の全身麻酔が必要』なこともあります。

神楽坂肌と爪のクリニックでは入院設備がありませんので、15歳以上の方を対象に日帰り手術を行っています。

5.治療費は?健康保険が使えるの?

先天性の場合は健康保険が使えます。自己御負担が3割の方だと3万円ほどです。有効な医療証をお持ちなら、自己負担はゼロとなることもあります。
ピアスが原因で裂けた場合は自費診療となり、手数料は各病院により自由に設定されます。手術料は4万円から20万円以上と、かなり幅があります。

★神楽坂肌と爪のクリニックでは1カ所6万円、2カ所目以降は5万円です。

6.どこで手術が受けられるの?

まずはネット検索で、お近くの形成外科を探して相談されることをお勧めします。

名前が似ているのですが、整形外科ではなく『形成外科』です。ご注意ください。

形成外科は比較的少ない診療科ではありますが、総合病院だと探しやすいかもしれません。執刀は在籍する医師のなかでも形成外科専門医を取得している医師に依頼するようにしてください。
美容外科を受診したい方もいらっしゃるかと思いますが、その場合は『健康保険の扱いがあること』『形成外科専門医が執刀するか』を忘れずに確認するようにしましょう。

7.どんな手術なの?

術式には『直線法』『Z形成術』『W形成術』がありZ形成術がもっとも一般的な術式です。どの方法も裂け目を縫い合わせるという意味ではおなじですが、耳たぶの縁での皮膚の組み合わせ方に違いがあります。

当院では一般的なZ形成術ではなく、W形成術を採用しています。理由は、W形成術は立体的な歪みが生じず、柔軟にデザインできること。また、裂け目の前後でズレや耳たぶの厚みに差があるケースや、高度な変形にも対応できるからです。

先天性の場合は裂け目が大きかったり、耳たぶのねじれや部分的な欠損があったりすることが多いです。患者さんひとり一人で異なる変形に対し、できる限り自然に仕上がるよう手術操作を行います。

8.手術の実際と術後の経過

まず、耳たぶの裂け目部分に少量の麻酔薬注射をします。多少痛みはありますが、耳たぶは鼻やまぶたと比べて感覚の鈍い部分ですので、比較的痛みは少ないです。手術中は触られている感覚こそあるものの、痛みはまったくありません。無痛だという認識で問題ありません。

手術前
手術プラン
手術後

手術時間は医師によります。十分な経験のある形成外科医なら15~30分ほどです。耳たぶにガーゼを貼り、テープで固定して終了です。手術直後から飲食も可能ですし、術後の痛みもほとんどないのでご安心ください。

日常生活については手術当日からほぼ通常通りで問題ありません。シャワーやシャンプーもできます。しかし、神楽坂肌と爪のクリニックでは3日間は運動、熱いお風呂、飲酒を控えていただいております。

手術前
縫縫合直後
抜糸直後

抜糸までの約1週間はご自宅で処置が可能ですので、通院は不要です。一週間後の抜糸は痛みもないため、麻酔の注射も不要。1~2分で終わるのでご安心ください。

術後は経過観察のため、3ヵ月おき、1年間通院していただきます。術後、耳たぶのしこりや赤みが気になると思いますが、1年ほどでほとんど目立たなくなります。

手術前
手術後のピアッシング

手術後はおおむね1ヵ月でピアスをあけることができます。しかし、その場合はトラブルを避けるためにも、手術を担当した医師にあけてもらうのが好ましいです。

9.まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。本日は『先天性耳垂裂』について詳しく説明しました。子どもの頃に手術を終えている方も多いのですが、成人後に手術を受けても結果に差はありませんのでご安心ください。

当院では先天性耳垂裂の方からのメール相談も承っております。気になる方がいらっしゃいましたらお手持ちのスマートフォンで撮った写真を送ってください。ご連絡お待ちしております。

▼耳垂裂・拡張ピアス・ピアス閉鎖メール相談▼
以下項目を記入・添付の上、当院までメールをお送りください。
・問い合わせ先アドレス:hadatotsume@gmail.com
・件名は「耳メール相談」として下さい
・耳タブの写真を1〜2枚。
・お名前、年齢、お住まいの都道府県
・相談の内容をお書き下さい。

また、今回のように
「ネットで調べても情報が載っていない」
「書き方が難し過ぎてイマイチよくわからない…教えて肌爪先生!」

という、ブログや動画で取り上げてほしいテーマがありましたら、お気軽にご連絡ください。


【記事監修・執筆】

医師 医学博士 院長 野田 弘二郎

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
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【新技術】人工爪による爪噛み矯正【ビフォー・アフター】

  • 2024.02.02

肌爪先生こと『神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
YouTubeにて『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』も開設しておりますので、
登録がまだという方はぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。

さて、本日取り上げるテーマは、当院ではご相談のとても多い「爪噛みの治療」です。

右と左は別々の患者さんです

指先は人目につきやすく、短い爪や丸くなった指先を人に見られることが苦痛で、社会生活や私生活で積極的になれないという方や、爪を噛むという動作が神経質で幼いという印象を与えるのでやめさせたいというご家族からのご相談もあります。

最近の研究では「自己肯定感や生活の質を低くしてしまう」という報告もあります。

長年悩んでいるうちに悪化させてしまったという方や、就職やお子さんの誕生を機になんとかして治したいと考え、当院を受診される方も多いです。

【目次】

1.爪噛み癖とは?

2.爪噛みによる指先の変化

3.爪噛みの治療法

4.人工爪による爪噛み矯正とは

5.爪噛み矯正のスケジュール

6.爪を噛まないためのセルフコントロール

7.爪噛み矯正の費用

8.おわりに


1.爪噛み癖とは?

爪噛みや指しゃぶりなど、習慣的に繰り返し身体をいじる動作は

『神経性習癖』『身体集中反復行動』と呼ばれます。

小児ではその原因として、脳の神経回路の未成熟が考えられていて、緊張や不安に晒されたとき、爪を噛むことで安心感が得られます。そのため子どもの場合、強く叱ってしまうことで余計にストレスがかかり、むしろ症状を悪化させることもあるので注意が必要です。

一方で、成人では小児期の癖が固定化したものがほとんどで、転職など社会環境の変化でストレスがかかると症状が悪化するというケースが多いです。

不安や緊張だけでなく、退屈に対する反応や親の爪噛みを真似して噛むこともあり、子どもによって程度の差はありますが、10才以下の子どもの約30%に見られます。その多くは無害で成長とともに自然となくなりますが、数%の方では15才以降まで持ち越してしまい、慢性化して治りにくくなります。このため肌と爪のクリニックでは、15才以降の方を対象に治療を行っています。

ちなみに余談ではありますが、かの徳川家康も爪噛み癖があったそうです。天下統一を果たした戦国大名の精神的ストレスは、計り知れないものがあったのではないでしょうか。

2.爪噛みによる指先の変化

爪噛みを日常的に繰り返すことで、指先には次のような変化が現れます。

ケース1.深爪

深爪典型例

爪が極端に短く「爪がぜんぜん伸びない」と表現される患者さんもいらっしゃいます。親御さんから「子どもの爪がまったく伸びなくなり、ここ数年爪を切ってあげたことがない」と相談を受けることもあります。

1本だけ極端無症状混在

すべての指のことが多いですが、特定の指だけ極端に短かかったり、無症状の爪もあります。

趾爪むしり

足指の爪を噛む子どももいますが、10才以降は成長とともに身体が硬くなると口が届かなくなり、代わりに手で足の爪をむしってしまうこともよくあります。

ケース2.爪の先端がガタガタ

拡大して観察すると、不規則にガタガタした状態というのがわかると思います。これは爪切りを使わず、自分の前歯で爪を噛み切っているためです。

ケース3.指先が丸っこい

何年にもわたって深爪に保たれているため、爪の押さえが無くなることで指先がポテッとした形になっています。

ケース4.爪周辺の皮膚がむしられている

サカムケをむしった跡があることが多く、

そのキズから化膿したり、

ウイルス性のイボになることもあります。

◆その他の症状

以前の動画で取り上げた洗濯板状爪を合併したり、歯に悪影響が出ることもあります。

3.爪噛みの治療法

3・4才の幼児であれば、オーガニックな植物由来の成分を含んだ苦いマニキュアを爪に塗ることが効果的なことがあります。しかそれはあくまで5才未満まで。5才以降になると、苦みを避けたい気持ちより、噛みたい衝動のほうが強くなるため、効果は限定的です。

医療機関で行われる標準的な治療は、精神科や心療内科でのカウンセリングやお薬となります。保険診療として認められ、全国の医療機関で受けることができます。

お子さん(15才未満)の場合、まずはかかりつけの小児科で相談されると良いでしょう。

人工爪治療前
人工爪治療中
人工爪治療後

肌と爪のクリニックでは、このような治療を行ったが上手く行かなかった、あるいは精神科で治療の前に別の方法を試してみたいという患者さんで、15才以上の方を対象に人工爪を使った爪噛み矯正という独自の治療を行っています。

4.人工爪による爪噛み矯正とは

人工爪治療前
人工爪治療後

医療用アクリル樹脂の人工爪で、先端を保護しながら爪を伸ばしていく治療です。患者さんお一人お一人、指1本1本の爪に合わせて、すべて手作業で人工爪を作ります。

人工爪つや消し仕上げ
人工爪つや消し仕上げ
人工爪治療前
人工爪治療中

長さだけでなく、色や艶も調整できるため、自然な仕上がりで、施術したその日からパッと見は正常な爪に見えます。

人工爪カラージェル仕上げ
人工爪カラージェル仕上げ

施術当日から人目が気にならなくなり、ストレスから解放されることで「気持ちがすごく楽になった」と喜ばれる患者さんも多いです。ほかの方法と違って、すぐに治療効果を実感できることが治療継続への強いモチベーションに繋がり、治療成功率を高めます。人工爪(アクリルパウダー)は非常に硬い医療用アクリル樹脂で、当院で世界的ピアニストやプロスポーツ選手の爪補強にも実績のあるタフな素材です。

手洗いや入浴などの日常生活はもちろん、スポーツもすることができます。

5.爪噛み矯正のスケジュール

人工爪で保護された状態で爪は伸びますが、概ね1ヶ月おきに人工爪を新しいものに載せ替えます。1回の施術時間は90分で症状によって2~4回の施術を実施。期間にして3~5ヶ月間で爪を先端まで伸ばすことができます。ここまでが治療の第一段階になります。

自爪が先端まで伸びてからが治療の第2段階。なぜなら、時間と費用を掛けて爪を伸ばしても、そこで治療をやめてしまうと、ほとんどの方がまた噛んでしまうからです。

治療と言っても通院は不要。ご自宅でご家族に爪を切ってもらうだけで費用もかかりません。お近くのネイルサロンで爪切りを依頼するのも良いでしょう。
私は、このように自分以外の人に爪を切ってもらうことを「第三者との爪の共有」と呼んでおり、これが“爪噛み治療を成功へと導く鍵”だと考えています。
爪を自分だけのものと考えず、第三者と共有することで、噛みたいという衝動に強いブレーキがかかるのです。毎週決まった曜日、決まった時間に爪を切ってもらい、その方に一種間の努力の成果を見てもらうのです。

これを自信がつくまで続けることが大切。それには数ヶ月から人によっては数年かかるでしょう。未来のために今、しっかりと断ち切ることが大切。根気強く向き合いましょう。

6.爪を噛まないためのセルフコントロール

再発対策のために、最近の研究で高い効果が認められている『癖の置き換え療法』を試してみるのもいいでしょう。

◎デカップリングといって噛みたくなったら数秒間、拳を強く握る方法

◎習慣逆転法といって指が口元にいきそうになったら、そのまま耳たぶに触れる方法

上記2点の方法が、効果が高いと言われています。

私が患者さんにお勧めしているのは「ストレスボール」や「爪噛み矯正リング」「爪噛み矯正トイ」の活用です。爪を噛みたくなった時でも変わりにこれらに触れることで安心感が得られ、繰り返すうちに衝動をコントロールできるようになり、最終的には完全離脱を目指します。

7.爪噛み矯正の費用

ここまでご紹介した人工爪による治療とそのプロトコルは、私自身が考案した『神楽坂 肌と爪のクリニックオリジナル』。そのため、治療に健康保険は使えず、自費診療となります。

施術費用は指1本あたり1回3,000円です。両手すべての指(10本)だと1回で税込み30,000円となります。症状によって2回から4回の施術が必要ですので、指10本の場合、軽傷の方でも6万円。かなり噛んでいる方で12万円が予算の目安となります。この他に、初診時のみ初診料3,000円が掛かります。

尚、料金については予告なく変更することがございますので、当院ホームページの料金表からご確認ください。

8.おわりに

爪噛みの治療に積極的に取り組んでいる医療機関というのは、残念ながらあまり多くないのが現状。そのため治療の機会を失っている患者さんがたくさんいらっしゃるのが残念でなりません。今回の記事によって、現状の改善に少しでも役立てられれば嬉しいです。

尚、神楽坂肌と爪のクリニックで治療をご希望の方は、当院ホームページの問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

ご相談、お待ちしています。

◆15才未満の方は、以下の理由で治療を行っていません。

自然治癒が期待でき、費用と時間が無駄になってしまう可能性が高い

└本人に爪噛みをやめようとする意欲が薄いため治療達成が困難

└施術時間が90分と非常に長く本人の負担が大きい

人工爪誤飲のリスクがある

<15才未満の方にはかかりつけの小児科で相談されることをお勧めします>


【記事監修・執筆】

医師 医学博士 院長 野田 弘二郎

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
  • プロネイリスト
  • ミラドライ公式認定医
  • オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
  • パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
  • 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員

<詳しいプロフィールはこちら>

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シミのレーザー治療をされた方の経過

  • 2024.01.18

こんにちは

シミのレーザー治療をされた方の経過をお伝えします。

レーザー照射前


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医者が教える、ファーストピアスでやるべきこと、やってはいけないこと

  • 2024.01.18

どうしてファーストピアスをセルフであけたくなるのでしょう?理由は

・コスパ、タイパ重視

・オシャレに詳しい友人にあけてもらいたい

・親に内緒であけたい

・ネット情報で安全を確認したし、友達はみな問題なくあけている

・とにかく今すぐあけたい!・・・

ファーストピアスをあけるのは若い年代の方が多いですからこのように考えるのはよく理解できます。

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ピアスのふさぎ方。クサイのはあなただけじゃない!その予防法と解決法をご紹介します!

  • 2024.01.17

こんにちは。肌爪先生こと『神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
YouTubeにて『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』も開設しておりますので、
登録がまだという方はぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。

先日『ピアストラブルトップ5』をテーマとして取り上げましたが、

今回はその中でも、最近お問い合わせの多い「ピアスの穴がクサイ」というお悩みにフォーカスして、お話しします。ピアス穴は気をつけないと誰でも臭くなってしまうことがあり、またその臭いに自分自身では気がつきにくいものです。今回はピアス穴がクサイというお悩みの『解決法から予防法まで』じっくりお話ししますので、ぜひ最後までご覧いただけると幸いです。そして私の考えに共感していただけましたら、ぜひご家族や周りのお友達にも教えてあげてください。

【目次】

1.ピアス穴がクサイって、どういうこと?

2.どうして臭くなるの?

3.臭くなったらどうすればいいの?

4.ピアス穴を塞ぐ手術とは?

5.ピアス閉鎖手術の実際

6.臭くならないための予防法は?

7まとめ


1.ピアス穴がクサイって、どういうこと?

これは当たり前のことですが、耳のピアス穴の臭いを自分自身の鼻で嗅ぐことはできません。そのため、ピアス穴辺りの耳たぶを指先でつまむようにすると指先に臭いが移り、これを鼻に持ってくると指が強烈に臭うというのが「ピアス穴がクサイ」という症状になります。ピアスをあけている方は、今すぐご自身の耳で試してみてください。…いかがでしょうか?

指についた臭いは石鹸で何度も洗わないと落ちないくらい強烈なものです。

“世界一クサイおでき”と言われる

「粉瘤」の中身とおなじ臭いですから、強烈さはかなりのものです。

これは30年以上前の話になりますが、医学部の講義で皮膚科講師から「粉瘤の中身を決して素手で触れてはいけない」と忠告されたことが、今でも耳に残っています。

それから医師になり、これまで千個以上の粉瘤を摘出してきましたが

中身を素手で触れたことは幸い一度もありません。

さて、この臭い。日常会話程度の距離ではわかるものではないのですが、あまりのクサさから「親しい人から嫌われるのではないか…」と心配になって治療を希望される方も多いです。

2.どうして臭くなるの?

ピアスの穴は耳たぶの表側と裏側にあり、その間はトンネルで繋がっており、その壁は皮膚で覆われています。皮膚の表面は角質で新陳代謝を繰り返し、剥がれ落ちた古い角質は垢(あか)になります。

トンネルの中は洗いにくいのでピアスを付けない状態で何ヶ月も放っておくと、垢がトンネル内にびっしり溜まってしまいます。

なにより、もともと耳たぶ周辺というのは皮脂の分泌が多い部位なのです。

健康な皮膚には“常在菌”といって日常的に存在する細菌群がいるのですが、この常在菌が垢や皮脂などの老廃物を分解することで、『プロピオン酸』や『脂肪酸』といった代謝物ができます。ピアス穴の強烈な臭いの正体こそが、まさにこの代謝物というわけです。

3.臭くなったらどうすればいいの?

★ピアスの臭い対策はじつは簡単で、ピアスをつけることで解消します★

ピアス穴に溜まった垢はピアスのつけ外しで押し出されて清掃されますし、ピアスをつけているだけでも自然とこすれて、ある程度清潔を保つことがでるのです。また、金属自体に殺菌作用があることもポイント。常在菌の増えすぎを抑制できます。

★もう一つの方法はピアス穴を手術で塞いでしまう方法です★

このような手術はあまり聞いたことがないと思いますが、じつは「ピアスの穴を塞いでしまいたい」という患者さんは意外に多いのが現状です。理由として考えられるのは、今回テーマとして取り上げたクサイ臭いのほかにも、以下のような理由があります。

◎金属アレルギーがありピアスをつけると痒くなったり、

汁が出たりするので塞いでしまいたい。

◎ピアス穴を片耳4個・5個と増やしすぎてしまった。

よく使う穴以外を閉じて見た目をスッキリさせたい。

◎仕事や家庭環境の都合からピアスをしていた過去はなかったことにしたい。

└コレは男性に多いです。

こういった事情のある方がピアス閉鎖を希望されています。手術で塞いでしまえば臭い対策だけでなく見た目もよくなります。

なお「手術せずに自然と塞がったから大丈夫ですよね?」という方がいらっしゃいますが、間違いです。見た目的には塞がっているように見えても、自然と塞がったピアス穴も臭いの原因になることがあるので解決にはなりません。

4.ピアス穴を塞ぐ手術とは?

では実際にピアス穴を塞ぐ手術、ピアスのふさぎ方とはどんなものなのか。言葉だけではわかりにくい部分がありますのでイラストを交えてご説明していきます。

先ほど説明したようにピアスは耳たぶの表側と裏側に穴があり、皮膚で裏打ちされたトンネルでつながっています。

手術ではトンネルを取り出し、表裏の穴を縫って閉じます。

これで耳たぶの中に垢の元となる皮膚は完全に取り除くことができます。

※要注意※

ある美容外科では表面の穴だけ閉じるそうですが、取り残されたトンネルに垢が溜まって腫れ上がってしまうので、絶対にやめていただきたいと思います。

また表の穴だけ閉じて、トンネルと裏の穴を閉じることを『プレミアム手術』と称して追加料金を要求するクリニックもあるので要注意です。

ピアス閉鎖の危険性を十分理解せずに手術を行う医師もいるので、病院選びはとくに慎重におこなうようにしましょう。

5.ピアス閉鎖手術の実際

ここからは、実際の手術の流れについてご説明していきます。

[STEP.01]

切開予定線をマーカーで描きますがキズを極力小さくするために最小限とします。

手術後に凹みが残らないようにピアス穴の入口にある、すり鉢状の凹みも切り取ります。

[STEP.02]

局所麻酔薬を注射します。手術自体は無痛ですが、注射した個所だけは多少チクチクします。

[STEP.03]

神楽坂肌と爪のクリニックでは、ここで特別な処置をします。こちらは企業秘密なので公開することはできません。申し訳ありません。ただ、同業の医師の皆さんであれば先ほどの切開予定線を見てお気づきかと思いますが、私たちは限りなく小さなキズでピアス穴を閉じることができます。それはこの特別な処置をおこなうからです。ほんの数秒なので患者さんは気がつかないと思います。

[STEP.04]

さきほど描いた切開予定線に沿って、耳たぶの表側と裏側の皮膚をメスで切開します。トンネルとその周りの脂肪の間に狭い隙間を作り、裏打ち皮膚だけを引き抜くように取り出します。表裏の穴の皮膚とその間にあるトンネルを“ひとかたまり”として取り出すのです。

皮膚が残っていると後々トラブルにつながります。ここは少し難しい部分ですが、私がフランスや日本の大学病院でやっていた“微少外科手術”のテクニックがとても役立っています。下の画像は取りだしたピアストンネルです。

背景にあるガーゼの目の荒さからかなり拡大していることが分かります。周辺を傷つけずにピアス穴とトンネルだけを引きに抜いていることが、お分かりいただけるかと思います。

[STEP.05]

トンネルを取りだした跡を、高周波メスを使って慎重に止血をします。

[STEP.06]

あとは皮膚を1~2針縫ってキズを閉じて手術は終了。手術時間は10分ほどです。

[STEP.07]

下は手術後の写真。キズは最小限でピアス穴の大きさしかないことが分かります。

6.臭くならないための予防法は?

大きく2つのポイントが挙げられます。

■ピアスは計画的にあけましょう!

ピアス穴の臭いは、3箇所以上あけているいわゆる“ピアス上級者”に多い悩みです。

若い時はピアスをたくさん開けても、すべての穴にピアスを通していたとしても、歳を重ねるなかで考え方や自らの置かれる状況が変化し、徐々に使わないピアス穴が増えていきます。それでもたまにピアスをつければ掃除になって良いのですが、なかには塞がっている穴もあり、凹みに垢がたまって臭いの原因になるのです。また、ピアス穴をたくさん開けるということは金属アレルギーのリスクが高まることも分かっています。

気分やノリでやたらと開けてしまうと、後々公開することになるので、開ける際はよく考えて開けるようにしましょう。

■ピアス周辺は清潔に!

もともと耳たぶ周辺は皮脂が多く、不潔にすると臭いの原因になります。

ピアスをつけていたとしてもキャッチ周辺が不潔になりやすいので、毎日シャワーの際、ピアスはつけたまま石鹸をつけて軽く洗いすすぐようにしましょう。

7.まとめ

今回は「ピアス穴がクサイ」というトラブルの対策についてお話しさせていただきました。

今現在、すでに臭いが気になる方というはもちろん、今は臭っていないけれど、将来臭うようになったら嫌だな(クサくなっても平気!という方はいないと思いますが…)という方は是非参考にしてみてください。また、ご自身だけでなく、この動画の内容をご家族やご友人、会社の同僚との会話のなかで、話題として取り上げていただけると嬉しく思います。

これからも皆さんのお役に立つ情報をどんどん発信していく予定。ちょっとした時間に、当ブログをチェックしていただけると幸いです。


【記事監修・執筆】

医師 医学博士 院長 野田 弘二郎

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
  • プロネイリスト
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  • オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
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  • 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員

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業界騒然!「ホクロ除去。手術VSレーザーどっちがイイ?」ホントのこと、言っちゃいます。

  • 2023.12.15

肌爪先生こと『神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
YouTube『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』、おかげ様で、チャンネル登録される方が増えてきました。ありがとうございます。
登録がまだという方はぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。

今回は「ホクロ除去」についてです。
方法としては『手術』と『レーザー』がありますが、はたして本当にイイのはどちらなのか?をテーマに、私の形成外科医としての考えを“同業医師への忖度抜き×完全患者さん目線”で、本当のところを包み隠さずお話ししていきたいと思います。

というと同業の先生方に怒られてしまいそうですが、ここはひとつ勇気を持ってお話しさせていただきますので、どうか最後までご覧ください。そして、私の考えに共感していただけましたら、是非ご家族やお友達にも教えてあげていただけると幸いです。

【目次】

1.ホクロの動画をたくさん見て感じたこと

2.ホクロ除去で必ず傷痕を残すのはなぜか?

3.手術とレーザーの傷痕の違い

4.手術の傷痕を目立たなくする工夫

5.手術VSレーザー、仕上がり以外のメリット・デメリットとは?

6.おわりに


1.ホクロの動画をたくさん見て感じたこと

昨今、YouTubeには医師が解説するホクロ切除動画が多数上がっています。
レーザーと手術のどちらが良いのかについても、たくさんの専門家による解説があり、私もいくつか視聴させていただいたのですが、そこでひとつ気づいたことがありました。

あくまで私が見た限りなのですが、動画で情報発信をされている方は、主にホクロ除去をレーザー治療で行っている美容系の先生がほとんど、ということです。

そして、それらの動画のほとんどが同じ結論に至っています。
それは「手術も良いのだけれど、やっぱりレーザーのほうがキレイになる」という結論です。一般の皆さんであれば「専門家が言うのだから、そうなのか」と納得されるのかもしれませんが、私は同じ医師として、また形成外科の専門医として、その結論にかなり違和感を覚えてしまうのです。

「いやいや、そうじゃないでしょ!」と…。黙っていられなくなり、この記事を書こうと思いました。

2.ホクロ除去で必ず傷痕を残すのはなぜか?

これを聞いて「えっ?」と思った方もいるでしょう。レーザーでホクロを取れば傷痕は残らないと思っていらっしゃいませんか?わかります。ただ、それは非常によくある、大きな誤解なのです。ご相談の多い皮膚病変の深さを、以下のイメージ図で比較してみましょう。

シミやイボは皮膚の浅い部分にある表皮病変。治療で取り除いても、そこに生じた欠損は正常の皮膚で覆われるので傷痕を残さずに治癒します。
一方で「ホクロ」というのは皮膚の真皮という深いところまであるので、手術かレーザーかに関わらず、取り除いた後は正常皮膚ではなく、瘢痕組織という傷痕の組織で埋められて治癒するという特徴があります。

レーザーでホクロを取るとⅢ度熱傷(皮膚の深い層にまで及ぶ重度の熱傷)に匹敵するキズになるのです。

瘢痕組織は少し、テカテカしていて正常皮膚とは質感が異なります。皆さんがキズと呼んでいるものそのものです。

3.手術とレーザーの傷痕の違い

ホクロをレーザーで除去すると、その大きさでやや凹んだキズ跡になる。これは多くの動画で説明されています。例えば直径1cmのホクロを除去すると、レーザーでは直径1cmの傷痕になります。

手術では除去後に1本の線状の傷痕になるよう糸で縫い縮めます。レーザーのように凹みこそしませんが、逆にキズの両端が盛り上がります。縫い縮める時に中央と端に近い部分では、皮膚の移動距離に差があるためで、犬の耳のように見えることからドッグイヤー変形と呼ばれています。

盛り上がる部分をあらかじめ切り取ることで、変更を目立たないように修正することはできますが、そうするとキズの長さは直径の3~4倍にする必要があります。つまり1cmのホクロ除去の場合、傷痕の長さは3~4cmの線になるということです。多くの動画で「手術ではキズが長くなる」と解説しているのはこのことを言っているのです。

4.手術の傷痕を目立たなくする工夫

傷痕が3倍になると聞くと、ひどく目立ってしまいそうですが、本当にそうなのでしょうか。実は手術ではキズ跡を目立たなくするテクニックがいくつかあるのでご紹介します。

術前(デザイン)
術後

ひとつは当たり前のようですが、丁寧に手術をすること。
長い傷痕もかなり目立たなくできます。写真のケースは若い女性の顎のホクロ。
私が手術で除去しました。左の手術デザインでは、傷痕がホクロ直径の3倍くらいになってしまうことがわかると思います。でも、右の術後1年の写真をご覧ください。いかがですか?長いキズ跡は目立っていませんよね。

術前
術後

こちらのケースも同じです。太い毛が生えていたので同時に処理してあります。術後の傷痕は見えますが、キズの長さは気にならないと思います。このようにキズが目立たないのは、手術ではキズ跡が細かい線になるので、レーザーと比べれば皮膚の表面から見える瘢痕組織の量が圧倒的に少ないからです。

術前
術後

一般的な考え方ではないのですが、ホクロ除去後の傷痕を目立たなくするために最も重要なのは、この「瘢痕組織をいかに少なくするか」ということだと私は考えています。

術前(他院でレーザー治療後)
デザイン
術後

また、別のテクニックとしてキズの長さ自体を短くすることもできます。写真のケースは上唇の盛り上がったホクロですが、慎重にキズを合わせることで、長さをホクロの3~4倍ではなく、2倍程度に抑えられました。
皮膚の伸展性や周辺筋肉の動きからドッグイヤー変形になりにくい場所だからです。じつはこの患者さんは、ほかのクリニックでレーザー治療を受けて、ホクロがまったく取れていないということで私のクリニックに来院されました。

そのクリニックの医師から「ホクロ表面にレーザーによるクレーター状の傷痕がみられます。最初にホクロを手術で取るとキズが3~4倍にもなるのでやめた方が良い」と説明されたそうです。論理的にはその通りですが、写真を見てわかるようにテクニックでカバーできることがお分かりいただけると思います。また、傷の治りの良い鼻やまぶたでは「くりぬき法」といって、ホクロ除去後に欠損を縫わずに自然と治るのを待つテクニックもあります。

術前(鼻尖部くりぬき)
術後

この場合、傷痕の長さはレーザーと同じです。このケースは鼻の大きなホクロで、欠損を縫い縮めてしまうと鼻の形が変形する心配があります。

「くりぬき法」を行うと欠損はレーザーと同じで瘢痕組織により埋められ、ホクロの大きさのやや凹んだキズとなりますが、レーザーの熱が加わらない分、治りが早くキレイに仕上がります。

術前(デザイン)
術後1回目
術後2回目

傷痕を長くしないテクニックは他にもあります。それが「連続縫縮術」という方法。写真は太ももにある500円玉を超える大きさのホクロ。普通に手術すれば傷痕の長さは8~10cmくらいになってしまう。かといって、レーザーで除去して500円玉大の傷痕を残せばこれも目立ちます。
このケースでは手術を2回に分けて行うことで、ホクロの長さより少しだけ長く、細いキズに抑えることができました。

術前
術後

このように手術の欠点とされるキズの長さも、経験とテクニックがあれば、ほとんどカバーできるのです。私は「どのようなホクロであっても、レーザーよりも手術のほうがキレイに仕上げられる」と考えています。

5.手術VSレーザー、仕上がり以外のメリット・デメリットは?

ここまで、ホクロ除去は手術のほうがレーザーよりキレイに仕上げられると説明させていただきました。しかし、それはあくまで私自身の経験から得た見解。そもそも誰がメスを握るのかによって手術の仕上がりも異なるので、単純に比較することはできません。
そこで、仕上がり以外の部分で、手術とレーザーにどのような違いがあるのか、以下の表にまとめてみました。表ではメリットは青、デメリットを赤で示しています。

まず健康保険による治療ですが、手術は美容目的でなければ可能です。美容目的ではない場合とはどういうことかというと「飛び出したホクロがひっかかる」や「急に大きくなって悪性が心配」といった理由がある場合です。費用は自己負担3割の場合、顔で2cm以下なら5000円程度。今回、この記事でお見せしたケースは全例自己負担4980円でした。

炭酸ガスレーザーによるホクロ除去に健康保険を使うことは、どのような理由があってもできません。費用はクリニックにより大きく異なり、5mm程度で一個あたり1~3万円くらいでしょうか。つまり、手術の2~6倍の費用がかかるということです。

手術では治療回数1回で取り残しがないかを病理検査で確認できますが、レーザーでは熱の影響がどこまで及んでいるのか判断しにくく、病理検査による切除範囲の確認もできないので、時々取り残しが起きます。多くのクリニックではその際の費用は無料のようです。

他院でレーザー治療を
受けたのち再発(鼻)
他院でレーザー治療を
受けたのち再発(手首)

写真の2つのケースは、他のクリニックでレーザーを受けたが再発してしまい、私のクリニックにいらしたケースです。鼻のホクロは毛穴部分で再発していますので、そこだけ追加でレーザー照射をしました。

手首のケースはテカテカしたキズの中央にホクロが再発しています。再発は仕方ないですが、レーザーの傷痕がタバコを押し当てた跡、いわゆる“根性焼き”のように見えてしまうのは問題です。こちらは傷痕ごと切除しましたが、今度はその跡が“リストカット”に見えてしまう心配もあったので斜めのキズに仕上げました。
こうしたケースでは最初から治療後の傷痕をイメージ(どう見えるのか?など)して治療にあたらなくてはいけません。

術前
抜糸前
術後

最後に抜糸です。手術では5~10日後に抜糸が必要となりますが、抜糸の翌日からキズ部分へのメイクが可能。レーザーでは、抜糸こそ不要ですがキズが自然になるのを待つため、メイクができるようになるまで10~21日と、手術の倍の日数がかかってしまいます。

いかがでしょうか。このように、ホクロ除去は仕上がり以外の部分でも、レーザーよりも手術のほうが有利なことが多いということが、おわかりいただけたのではないでしょうか。

6.おわりに

最後までお読みいただきありがとうございました。
ホクロ除去に関する動画のほとんどはレーザーのメリットは説明しても、手術のメリットはあまり語られていませんでした。
今回の記事と以下の動画で、手術には患者さんにとって好ましい点がとても多いことがお分かりいただけたと思います。ついつい熱が入ってしまい、ボリューミーな内容になってしまいました(猛省)。

キレイに仕上げるにはスキルとセンスが要求される方法なので、ご興味をお持ちの方はお近くの形成科専門医に相談されることをお勧めします。
神楽坂肌と爪のクリニックで治療をご希望の場合は、こちらからご予約を承っております。
ご連絡お待ちしております。


【記事監修・執筆】

医師 医学博士 院長 野田 弘二郎

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
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神楽坂肌と爪のクリニック 形成外科|腫瘍皮膚科|美容皮膚科
院長 野田 弘二郎(日本形成外科学会専門医)
副院長 野田 真喜(女性・日本形成外科学会専門医)
〒162-0825
東京都新宿区神楽坂2-12-15 さわやビル2F
予約制03-3513-8212
●終日診療 △午前の部のみ診療 -休診
【平日】10:00~13:00/14:00~19:00
【土曜日】9:30~12:30/13:30~18:30
初診の最終受付は平日18:15、土曜日17:45となりますのでご注意下さい。
  日祝
院長野田 弘二郎
副院長野田 真喜(女性)
Access
◆JR総武線
「飯田橋駅」西口より徒歩3分
◆東京メトロ有楽町線、東西線、南北線
◆都営大江戸線
「飯田橋駅」B3出口より徒歩3分

当院には駐車場はございません。お車の場合は飯田橋駅ラムラ地下駐車場が便利です。(30分:300円・駐車サービス券はございません)

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