ピアストラブルTOP5
神楽坂肌と爪のクリニック院長の野田です。今回は当院でもご相談の多いピアストラブルについてお話しをさせていただきます。
今は6月ですが、この時期はピアスのトラブルのピークの谷間にあたります。ピアストラブルのピークは4月と8月なのです。
4月は新生活の季節。心機一転、ピアスデビューする人が多いもの。実はピアストラブルの半分以上はファーストピアスによるものなので春にはピアストラブルが急増します。
もう一つのピークは8月。夏もピアスデビューされる方も多いですよね。それだけじゃなく、夏は汗をかきやすく、海に出かけるなどピアスが塩水に触れる機会も多いものです。実は塩水がピアスかぶれの原因になるのです!
素敵なピアスライフを楽しむためにも、正しい知識を身につけましょう。
ピアストラブルTOP5
もくじ
■第5位…『ピアス穴がクサイ』ピアス上級者に多い意外な悩みとは?
■第4位…『ピアス穴が伸びて長くなる、耳たぶが裂ける/耳垂裂(じすいれつ)』周りが驚くホラーな見た目ですが手術で治せます!
■第3位…『しこりができる/ケロイド・粉瘤(ふんりゅう)』気になってついつい触っているうちに巨大化することも
■第2位…『ピアスが耳たぶに埋まる』セルフのファーストピアスはハイリスク!
■第1位…『はれる・化膿する・ピアスが入らない』ピアス初心者あるある
では5位から詳しく解説します。
■第5位…『ピアス穴がクサイ』ピアス上級者に多い意外な悩みとは?
症状:ピアス穴の辺りを触れると指に強烈な臭いがうつる。会話程度の距離ではわからないが、親しい人から耳の臭いを指摘されることも。こちらもお読みください
原因:臭いの原因はピアス穴の中に溜まった皮膚の垢。普通はピアスのつけ外しで垢が押し出されて清掃され、ピアスをつけているだけでも自然とこすれてキレイに保てるのですが、使っていないピアス穴は何年も垢が溜まったままになるのです。これがビックリするくらいクサイ!
なりやすい人:ピアスをたくさん空けている人。全ての穴を使うわけではないので普段使わないピアス穴が増えます。たまにピアスをつければ掃除になって良いのですが、なかには塞がっているケースもあり、凹みに垢がたまりやすく臭いの原因に。
解決策:
●定期的にピアスをつける。月に数日で充分です。
●手術でふさぐ(ピアス穴閉鎖術)。臭い対策だけでなく見た目もよくなります。なお手術せずに自然と塞がったピアス穴は臭いの原因になります。
予防法:ピアスはよく考えて計画的にあけてムダな穴を開けないことが大切です。
■第4位…『ピアス穴が伸びて長くなる、耳たぶが裂ける/耳垂裂(じすいれつ)』周りが驚くホラーな見た目ですが手術で治せます!
症状:耳たぶがピアスで切れてしまうのがピアスによる耳垂裂。朝起きたらピアスがキャッチごと落ちていて気がつく方が多いです。それ以前の数年間でピアスが徐々に下がって(穴が伸び)ていき、最後は糸状の細い皮膚でつながっているだけになっています。このためちょっと触れただけで痛みも出血もなく切れてしまいます。
原因:原因はピアスの金属と肌があわないこと。詳しく言うとアクセサリーに含まれるニッケルとクロムといった金属素材による刺激や金属アレルギーによる慢性的なカブレ(カサカサ、赤み、腫れ、痒み、びらん等)。これが治ってはまたカブレることを繰り返すうちにピアスが徐々に下がって行きます。多くの患者さんはカブレと認識せずピアスを続けて悪化させついには裂けてしまいます。中には消毒液にもかぶれて状況が複雑化しているケースもあります。締めつけによりピアスが食い込むこともリスクを高めます。
「穴を端のほうにあけた」「重いピアスをつける」ことが原因と考えている方が多いですが、実はそれだけで切れることはほとんどありません。小さなピアスでも肌に合わなければ下がってきてしまいます。
なりやすい人:アトピー性皮膚炎の人、金属アレルギーの人、ピアスをたくさんあけている人(金属アレルギーのリスクが高い)、民芸品アクセサリー(貴金属ではない)が好きな人。耳たぶが厚い人、キャッチで耳たぶを締めつける人。
解決策:
●手術で縫いあわせる:比較的レアな手術ですが、症例数の多い外科医なら跡をほとんど残さずに治すことができます。当院では3000件以上の定番手術です。詳しくはこちら
予防法:
●汗をかく時や海水浴の時はピアスを外す:ピアスが汗や海水などの塩水に触れると金属がイオンとして溶け出しやすくなります。金属イオンが皮膚のタンパク質と結合すると身体がそれを異物とみなすようになり湿疹などのアレルギー反応を起こします。これが金属アレルギー。アクセサリーに含まれるクロームやニッケルへのアレルギーが多く日本人の10人がかかっていると考えられています。
●肌に合わない金属を避ける。耳たぶは、まぶたと並んでデリケートな場所で、指輪や腕時計は大丈夫でもピアスだとかぶれてしまう人も多いです。そこでピアス素材には特に気を遣いましょう。特にメッキは要注意。一度でも赤くなったらそのピアスはつけないこと。敏感な方は比較的トラブルが少ないプラチナ、医療用ピアスでも使われるサージカルステンレスやチタンがオススメです。ただし「プラチナ」と表記されていても、粗悪品も多く出回っていますのでかならず信頼できる宝飾店や百貨店で購入しましょう。
●ピアスで耳たぶを締めつけないことも大切。1ミリ程度の余裕ができるように耳タブの厚い人は長い軸のピアスを使いましょう。
■第3位…『しこりができる/ケロイド・粉瘤(ふんりゅう)』気になってついつい触っているうちに巨大化することも
症状:ピアス穴を中心にコリコリしたしこりを触れる。しこりを押すと痛みがあったり、化膿して腫れ上がることがある。
原因:粉瘤やケロイドといった皮膚の病気。粉瘤は袋状のできもので、皮膚の下に落ち込んだ角質から垢がどんどん溜まって球状に大きくなったもの。粉瘤はもともと耳たぶ周辺にはできやすいのですが、ピアスをきっかけにできることがあります。いじっていると急に赤く腫れ上がって膿が出ることがあります。
もう一つがピアスケロイド。ケロイドとは、傷跡の組織が異常に増殖した状態でピアス穴を中心に組織が硬く赤くなり、徐々に大きくなります。痒みや押すと痛いこともあります。
なりやすい人:ケロイドの場合、身体の他の場所にもケロイドができやすい人(ケロイド体質)、軟骨ピアスをあけている人、ピアスがジクジクした状態が続いている人。
解決策:
●粉瘤は切除。化膿して赤く腫れ上がることがあり、その場合は飲み薬や切開で炎症が治まるのを待って後日切除。
●ケロイドは症状によって圧迫、飲み薬、貼り薬、ステロイド注射、切除など。
予防法:ケロイド体質の人はピアスをあけるのは慎重に。
軟骨ピアスは避ける。軟骨部のピアスはケロイドだけでなく、炎症を繰り返したり軟骨炎からの耳変形のリスクがあるのでオススメしません。
■第2位…『ピアスが耳たぶに埋まる』セルフのファーストピアスはハイリスク!
症状:ピアスヘッド(石の部分)やキャッチが皮膚の下にめり込んで取れなくなる、外から見えなくなる。
原因:ピアスによる耳たぶの強い締めつけ。ピアス初心者は「ピアスが落ちるのが心配だから」とキャッチをきつく締めてしまいがち。実はこれはとても危険。刺激によって腫れが生じ、腫れによりますます締め付けが厳しくなりやがてめり込んでいきます。
なりやすい人:セルフでファーストピアスの人、ピアスに不慣れな人、心配性の人、小さなピアスを好む人、耳たぶの厚い人
解決策:
●手術でピアスを取りだす(保険診療)。ピアス穴を残したい場合はシリコン製の特殊なレスキューピアスで穴を確保しながら治療する方法も(自費診療)。
予防法:
●ピアスに余裕を持たせる。耳たぶとピアスヘッドやキャッチの間は1ミリ以上の隙間が必要です。
●耳たぶが厚い方はピアスの軸が長いものだけをつける
●耳たぶの厚い方や不慣れな方はシリコン製ピアスキャッチをオススメします。
■第1位…『はれる・化膿する・ピアスが入らない』ピアス初心者あるある
症状:ピアス穴周辺の赤み、かゆみ、腫れ、汁がでる、皮むけ、ピアスが入らない。悪化すると大きく腫れ上がったり耳の下リンパに腫れや痛みが出ることも。
原因:触りすぎによる刺激、ピアスのつけはずしのときの傷、金属が肌に合わない、消毒液によるかぶれ。
なりやすい人:ピアスが気になって触りすぎる人、ピアスのつけ外しに不慣れな人、ピアスをあけて2年以内の人、金属アレルギーの人
解決策:
●ピアスを外す:耳たぶを守り、それ以上のトラブルに発展させないため最も確実な方法はただちにピアスを外すことです。ひどく腫れている場合はそのまま閉じてしまうことも多いです。ピアス穴を残したい方のために当院ではシリコン製レスキューピアスでピアス穴を確保しながら治療する方法も行っています。
●ステロイド軟膏:炎症を抑える作用があり、ほとんどのケースではピアスを外してステロイド軟膏を塗ると治癒します。金属アレルギーにも効果的です。市販品は効果が不十分なことがあるので医療機関で相談されることをお勧めします。
●飲み薬(抗生物質、消炎鎮痛剤):悪化して化膿性炎症や化膿性リンパ節炎を起こしている場合に使用されます。
●よくすすぐ:浸出液が多くなるので毎日シャワーでよくすすぎましょう。ただし決して消毒液はしないで。赤みや腫れを「化膿している」思い込み、消毒や軟膏で悪化させる方も多いです。多くは刺激による炎症であって膿が出るという方のほとんどはカブレによる浸出液です。がんばって毎日消毒してしまうと逆効果。消毒液のカブレも合併してトラブルから抜け出せなくなります。殆どケースではいわゆる化膿、化膿性炎症まではいたっていません。
予防法:
●ピアスに触れすぎない:当院でピアスをあけた方には「1日1回シャワーの時に、軽くすすいだあと、ピアスの石持って半周だけ回してください。それ以外はピアスに触れないで」と指導しています。理由は、ピアスによる赤みや腫れの最大の原因が触りすぎだから。手を洗えばOKとかではなく、触れる(刺激する)こと自体がNGなのです。
●頻繁にピアスをつけ外ししない:ピアスのトラブルの多くはピアスをつけはずしの時に起きます。特に開けたばかりのピアス穴は壁の皮膚が薄くとてもデリケート。ピアス軸の先端で傷つけて腫れることがよくあります。また安定しない間は自然とピアス穴が狭くなることもあり、そこに無理に入れると傷つけて腫れます。傷つけるくらいならピアスをつけっぱなしにしているほうがずっとトラブルは少ないのです。
●慎重にピアスを入れる:開けたばかりのピアス穴は壁の皮膚が薄くとてもデリケート。ファーストピアスは穴が落ち着く2ヶ月は入れたままにしましょう。1年間は不安定なので入れ替えには注意が必要。お出かけ直前の慌てた状況でピアスをつけてはいけません。特に不慣れな間は朝の気持ちに余裕のある時につけるようにしましょう。
●ピアスを入れる時に軟膏をつける:ピアス軸の先端に軟膏をつけると滑りがよくなり壁を突き破ることがありません。
●消毒液はしない:ファーストピアスの後、毎日消毒を勧められることがあると思いますが、消毒液はカブレることが多く、ピアス洗うのも不十分になりがちでむしろ逆効果。緩めにつけたピアスを毎日シャワーですすぐだけで充分清潔を保て、トラブルも少ないです。
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ピアストラブルを起こしやすい人の特徴としては『ピアスをはじめて開ける人』と『ピアスをたくさん開ける人』で二極化しています。とくにファーストピアスは一番の肝と言えるでしょう。というのも実はピアストラブルの半分以上はファーストピアスで生じ、一度起きると生涯に渡ってトラブルが続くことも珍しくないからです。
セルフであけた方は是非ご自身でトラブルに興味・関心を持っていただきたい。トラブルの多くは未然に防ぐことができ、起きてしまったトラブルには但し対処することが大切だからです。また今日のブログの内容を、知識としてご家族やご友人、会社の同僚との会話のなかで、話題として取り上げてもらえると嬉しいです。
【記事監修・執筆】
医師 医学博士 院長 野田 弘二郎
- 日本形成外科学会専門医
- 皮膚腫瘍外科指導専門医
- プロネイリスト
- ミラドライ公式認定医
- オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
- パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
- 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員
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