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神楽坂 肌と爪のクリニック

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神楽坂「肌爪日記」クリニックブログ

検証!皮膚癌でよくある5つの誤解【ほくろ除去の誤解シリーズ2】

神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。

YouTubeにて『神楽坂肌と爪のクリニック公式チャンネル』も開設しておりますので、
登録がまだという方はぜひチャンネル登録をよろしくお願いいたします。

さて、ほくろ除去の誤解シリーズ第2回となる今回は、
“ほくろと皮膚癌の見分け方”についてお話していこうと思います。

※前回の記事はこちら

ネット上には、ほくろのセルフチェックに関する情報が溢れています。
でも、はたしてそれって、本当に信頼できるのでしょうか?


不安を煽るような情報や、
意図せずとも大きな誤解を招いてしまう情報が数多く存在しています。

また、情報を発信する側が誤解したまま伝えているケースも少なくありません。

今回は、そんな“誤解だらけ”の皮膚癌の見分け方について、
一緒に検証しながら、正しい知識に近づいていけたらと思います。

記事の後半には、私自身が診察の中で皮膚癌を疑う際に
注目しているポイントについてもお話しします。

ぜひ最後までご覧いただき、ご家族やご友人とも共有していただけたら嬉しいです。

1.検証!皮膚癌でよくある5つの誤解

1-1.「大人になってから出てくるほくろは癌!」は誤解

1-2.「急に大きくなるほくろ、飛び出しているほくろは癌」は一部事実だが誤解が多い

1-3.「足の裏のほくろは癌!」は大きな誤解

1-4.「爪の黒い線は癌!」も誤解が多い

1-5.「ABCDE ルールで癌が見つかる!」は部分的に正しいが大きな誤解がある

2.医師が皮膚癌を疑うサインとは

3.まとめ:皆さんに伝えたい大切なこと


1.検証!皮膚癌でよくある5つの誤解

ネット上でよく見かける悪性のほくろの特徴には、次のようなものがあります。

どれも有名ですから、一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。
中には「そうなんだ!」と信じていらっしゃる方も多いかもしれませんね。

しかし、実はこれらの情報は「完全なウソ」とまでは言えないものの、
誤解を招く内容が多く、医師の立場から見ると、ほとんど参考にならないのが実情です。

「テレビやYouTubeで有名な先生だって言っているのに、なぜ誤解だらけって言えるの?」
そう思われる方もいらっしゃるでしょう。では、なぜそのような誤解が生まれてしまうのか。
その理由を、これから一緒に検証していきましょう。

1-1.「大人になってから出てくるほくろは癌!」は誤解

これは、患者さんから特によくいただく質問のひとつです。
確かに、こうした情報はさまざまなところで見かけますし、
医師でない方が信じてしまうのも無理はありません。
ですが、これは明らかな誤解です。

実は、赤ちゃんの約99%は、生まれたときにほくろがひとつもありません。
3歳頃から少しずつ現れはじめ、20代をピークに増えていきます。
そして、大人になってから新しいほくろが出てくるのも、まったく普通のことです。
高齢でほくろがまったくないという方は、特殊な遺伝的体質を除けば、まずいません。

なぜなら、ほくろの発生には、『メラノサイト』という色素細胞の増殖が関係しており、
その背景には遺伝的な要因に加え、紫外線の影響があるとされています。
長年、紫外線を浴びることで肌が刺激を受け、新しいほくろができてくるわけです。
つまり、加齢とともにほくろが増えるのは、ごく自然な生理現象と言えます。

こうした誤解が広がってしまう背景には、皮膚癌が主に成人以降に発症すること、
そしてその初期症状が「ほくろのように見える」ことがある、という事実があります。

「成人後に新しく現れた皮膚の変化に注意を払うこと」は確かに大切です。
しかし、そこから「大人になってから出てくるほくろは癌」と結論づけてしまうのは、
やや飛躍があり、誤解と言えるでしょう。

1-2.「急に大きくなるほくろ、飛び出しているほくろは癌」は一部事実だが誤解が多い

これも、よくあるご相談のひとつです。
「以前からあったほくろが、最近になって急に大きくなってきた。
癌ではないかと心配です」といったお悩みです。

もちろん、癌の可能性がまったくないとは言い切れません。
しかし、このケースにも多くの誤解が含まれているのが実情です。

確かに、皮膚癌の悪性度を評価するうえで

「ダブリングタイム(倍加時間)」という指標があります。

これは病変の大きさが2倍になるまでにかかる時間のことで、
この時間が短いほど悪性度が高いとされます。
悪性黒色腫(メラノーマ)では、
3ヶ月で大きさが倍になるとも言われています。

しかし、皆さんが気にされている「急に大きくなったほくろ」はどうでしょうか?
急に大きくなったと言っても、数年前の記憶や写真と比べて目立ってきた
という程度ではないでしょうか。

一般的なほくろのダブリングタイムは
数年から10年以上と言われており、その程度の成長であれば実は自然なことなのです。

メラノーマほどではないにしても、他の皮膚癌もダブリングタイムは
ほくろより短い傾向があります。

ほくろが大きくなるからといって、過度に深刻に考える必要はありませんが、
そうした病変の変化に注意を払うことは非常に大切です。

私がおすすめするのは、
「月に1回、病変に定規を当ててスマホで撮影し、記録を残す」ことです。

感覚的な判断ではなく、数字で記録をすることで、
不安に思っている事実を客観的に見直せますし、
医師に相談する際も説明がしやすくなります。

次に、「飛び出してくるほくろは癌」という誤解についてお話しします。

「ほくろが盛り上がってきたので、癌ではないか」と心配して受診される方も多いです。
しかし、顔に多く見られる「ミーシャ型母斑」というタイプのほくろは、
年齢とともに半球状に盛り上がってくることがよくあります。
さらに色が薄くなったり、柔らかくぶよぶよとした感触になることもあります。
こうした変化が、患者さんの不安を招いてしまうのです。

確かに盛り上がるタイプの皮膚癌はあります。

しかし実は皮膚癌の多くは平らで、潰瘍(かいよう)と言って
むしろ凹んでいることさえあるのです。

私たち医師は、ほくろが飛び出していることを理由に、
悪性を疑うことはありません。

1-3.「足の裏のほくろは癌!」は大きな誤解

これもまた、多くの方が抱いている誤解のひとつです。

足の裏にほくろを見つけて慌てて受診される患者さんが、
月に一人は必ずいらっしゃいます。

足の裏は荷重や摩擦の影響でほくろが変形し、
いびつな形になりやすいため、心配になる気持ちはよく理解できます。

さらに、ネットで調べると「足の裏のほくろはメラノーマが多い」といった情報が
多く見られるため、不安になるのも無理はありません。

確かに、「メラノーマは白人では顔や背中に多いが、日本人では手足、特に足の裏に多い」というのは事実です。

しかし、それと「足の裏のほくろは癌である」あるいは
「足の裏のほくろがメラノーマになりやすい」というのは、まったく意味が異なります。

そもそも、日本人におけるメラノーマ(悪性黒色腫)は、希少癌の一つです。

希少癌の定義は「10万人に年間6人未満」ですが、
メラノーマはその中でもさらに少なく、1~2人程度です。

つまり、日本では滅多に見られない病気と言えます。

一方、オーストラリアではメラノーマの発生率が日本の30倍以上で、
乳がんと同程度の頻度で発症します。よくある病気の一つと言えるでしょう。

皆さんの周りでも乳がんや大腸がんの患者さんは珍しくないかもしれませんが、
メラノーマの患者さんはほとんどいないのではないでしょうか?

それも当然で、大腸がんはメラノーマの100倍も多く発症しています。

私自身、医師として30年以上の経験の中で、
患者さんのご希望に応じて足の裏のほくろを数え切れないほど除去し、検査してきました。

テレビなどで取り上げられると、翌週には検査希望の患者さんが増えます。

しかし、それらが悪性黒色腫であったことは、一度もありません。

ただし、メラノーマは悪性度が高いため、少ないからといって油断はできません。
足の裏のほくろの形や色、大きさ、変化には注意を払うべきです。

しかし、「癌になりやすい」という直接的な関係はありません。

また、かかとなどの荷重部分にできるほくろは、傷が魚の目になって痛むこともあります。

メラノーマが心配な場合は、安易に除去せず、まずは皮膚科で相談し、
拡大鏡を使った「ダーモスコピー検査」を受けることをおすすめします。

1-4.「爪の黒い線は癌!」も誤解が多い

足の裏のほくろに比べれば少ないのですが、
爪に現れる黒い筋も癌だと誤解されやすい変化です。

ネットで『爪の黒い筋』と検索すると、メラノーマだと読めるタイトルがずらりと並び、
患者さんはさぞ不安になるだろうと思います。

しかし、これもメラノーマ悪性黒色腫である可能性は極めて低く、
ほとんどが良性の爪甲黒色線条です。

爪の下の血豆や爪水虫、長年の爪かみが原因で、似たような変化が現れることもあります。
また、複数の指に同様の症状が出る場合は、抗がん剤の副作用や、
日常的にハイヒールを履くなどの慢性的な圧迫が原因であることが多いです。

また、爪の中の黒い点も癌だと誤解されがちです。

「黒いものがずっと同じ場所にある」と訴える患者さんも多いです。

これはほとんどの場合、爪の下に溜まった血液(血腫)によるものです。
ぶつけた覚えがないため、血液ではないと思う方もいらっしゃいますが、
経験上、多くはハイヒールなどの靴による圧迫が原因で、
患者さん自身は無理をしている認識がないことがほとんどです。

実際に、月に1回通院して経過を追うと、黒い点が手では約3ミリ、
足ではその半分ほど移動しているのが確認されます。
これは爪の成長に伴う色素の移動であり、良性の証拠です。
このような場合も、定規を当ててスマホで撮影し、経過を観察する方法をおすすめします。

ただし、爪の黒い線にも注意すべき兆候があります。

先細りや途切れなど、太さや色が不均一な場合や、
爪の根元の皮膚に色素が染み出すように広がっている(ハッチンソン徴候)、
あるいは爪がボロボロに破壊されている場合は注意が必要です。

このような症状がある場合は、悪性黒色腫(メラノーマ)を疑い、
すぐに皮膚科や形成外科で相談してください。

1-5.「ABCDE ルールで癌が見つかる!」は部分的に正しいが大きな誤解がある

癌を見つけるのに有名な『ABCDEルール』をご存じの方も多いでしょう。
私も日常診療でよく参考にしています。

多くの方が「これで皮膚癌が見つかる!」と思っているかもしれませんが、
残念ながらそれは大きな誤解です。
なぜなら、この方法ではほとんどの皮膚癌を見つけることができないからです。

では、どういうことでしょうか?
この「ABCDEルール」は、正確には「メラノーマのABCDEルール」なのです。

メラノーマは怖い病気として知られていますが、
日本人では非常に珍しい希少癌の一つです。
もともと日本人に少ない皮膚癌の中でも、
メラノーマはわずか数パーセントに過ぎません。

つまり、皮膚癌の95%以上はメラノーマ以外のものです。


ほとんどは、基底細胞癌や扁平上皮癌と呼ばれるもので、
これらにはABCDEルールは当てはまりません。

したがって、「ABCDEルールで癌が見つかる」というのは、
かなりの拡大解釈であり、むしろ誤解と言えるでしょう。

顔のほくろ除去で注意すべきポイント

では、私たち医師はどのような時に皮膚癌を疑うのでしょうか?

もちろん、先ほどのABCDEルールなど医学的な根拠に基づいていますが、
長く診療を続ける中で悪性腫瘍は、経験ある医師が「何かおかしい」と感じて
それがきっかけで発見されることも多くあるのです。

私達がおかしいと感じる所見には以下のようなものがあります。

充分な経験のない美容皮膚科医が、こうした変化に気づかずに
安易にほくろをレーザーで焼いたり、患者さん自身が皮膚を腐食させる薬剤を使ったり、
安全ピンでいじって取ろうとしたりすることがあります。


こうした行為は「治療前の介入」あるいは「修飾」と呼ばれ、非常に危険です。

なぜなら、これにより皮膚癌の悪性度が高まってしまうだけでなく、
見た目が変化することで正確な診断が難しくなり、
万が一、皮膚癌であった場合には発見が大幅に遅れることがあるからです。

最近では、専門医資格を持たない、または経験の浅い美容皮膚科医も増えており、今後このようなケースが増加するのではないかと懸念しています。

まとめ:皆さんに伝えたい大切なこと

ネット上に流布しているさまざまなセルフチェックは、
「それが癌である場合もある」という程度の話であり、
むしろ「それは非常にまれで、例外的なケースである」
ということがお分かりいただけたと思います。

言い換えれば、患者さん自身が行うセルフチェックは誤解が多いということです。
ネットで自分に当てはまりそうな情報を集めて不安な夜を過ごしても、
決して良い方向には進みません。

皮膚科や形成外科の専門医に相談することこそが、
早期発見や不安の解消につながる、最も確実な方法です。

今回の記事が、皆さんの不安解消と正しい知識の習得に役立てば幸いです。


次回以降もほくろの誤解除去の誤解をシリーズで取り上げていきますので、どうぞ次回の更新を楽しみにお待ちください。

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【記事監修・執筆】

医師 医学博士 院長 野田 弘二郎

  • 日本形成外科学会専門医
  • 皮膚腫瘍外科指導専門医
  • プロネイリスト
  • ミラドライ公式認定医
  • オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
  • パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
  • 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員

<詳しいプロフィールはこちら>

神楽坂肌と爪のクリニック 形成外科|腫瘍皮膚科|美容皮膚科
院長 野田 弘二郎(日本形成外科学会専門医)
副院長 野田 真喜(女性・日本形成外科学会専門医)
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