レーザーでホクロを取るとなぜ必ずキズが残るのか?【ほくろ除去の誤解シリーズ5】
- 2025.11.20
神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
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さて、『ホクロ除去の誤解シリーズ』第5回目の今回ですが、
「レーザーでホクロを取るとなぜ必ずキズが残るのか?」
というお話をします。

過去の記事や動画でも繰り返し説明してきたことなのですが、
改めてメインテーマとして取り上げたいと思います。
というのも、レーザー後のキズ跡に悩む患者さんからのご相談が減るどころか、むしろどんどん増えているからです。
本記事では「必ずキズ跡になる理由」を詳しく解説し、最後にはその解決法もお伝えします。
すでにキズに悩んでいる方も、今後ホクロ除去を考えている方も、ぜひ最後までお読みください。
そしてもし私の考えに共感していただけましたら、ご家族やお友達とも共有していただけると嬉しく思います。
1.レーザー治療後のトラブル

当院では、レーザー治療後のトラブル関するご相談をほぼ毎日いただいております。
お悩みは大きく分けて2つ、レーザー後のキズ跡問題と、ホクロが取れない問題です。
ホクロが取れない問題については、今後別の記事で改めて取り上げる予定です。

さて、レーザー後のキズ跡問題ですが、これには複数の要因が絡んでいます。
1つは、医師の判断力やスキルの問題。
例えば5ミリを超える大きなホクロを無理にレーザーで除去して目立つキズ跡を残したり、
レーザーに不慣れな医師が過剰に照射してしまい、周囲まで火傷を拡大させることで、
元のホクロより大きなキズ跡になるといったことです。
もう一つの要因は、ネット上の偏った情報と説明不足からくる誤解と過度の期待です。

まず大前提として、レーザーはホクロを消し去る魔法の杖ではありません。
多くの方が「最新のハイテク治療器機」という印象を持っていますが
実は炭酸ガスレーザーは、50年以上前に開発された古典的なレーザーです。
このレーザーが反応するのは、私たちの体の大部分を占める「水分」。
そのため、ホクロだけでなく周囲の正常な皮膚にも熱が伝わりやすく、
組織を区別なく破壊してしまうリスクがあります。
さらに、熱がこもりやすい特性のため、想定より広範囲を火傷させてしまうことも。
治療の際には強い痛みを伴い、手術と同様に麻酔注射が必要になります。
ダウンタイムも長く、最終的にはホクロと同じ大きさの、やや凹んだキズ跡が残るのです。
皆さんもすでにご覧になったかもしれませんが、YouTubeなどで公開されているホクロ除去のレーザー動画を見ると、これらの「不都合な真実」にはほとんど触れられていません。
マーケティング上の都合からか、レーザーはハイテクで手軽な治療機器として紹介される一方で、手術は「古典的で恐ろしい方法」のように描かれることが多いのです。
形成外科医として、この偏ったイメージには強い違和感を覚えます。

こうした情報を鵜呑みにしてレーザー治療に過度な期待を抱いてしまうと実際の結果とのギャップに落胆し、「レーザー後のホクロ跡」という新たな悩みに繋がることもあります。
どのような治療法であっても、ホクロを除去すれば何らかのキズ跡が残るという事実を正しく理解し、それを前提に治療と向き合うことが大切です。
2.キズ跡が残る事実の医学的説明
ここでは、医学的な根拠をもとに説明します。
その理解がなければ、必ずキズ跡が残るという事実に向き合うことが難しいからです。
皆さんもご存じの通り、ケガをするとその部分にキズ跡が残ります。
ずっと残るキズ跡がある一方で、しばらくするとキズ跡が消えたという経験がある方も多いのではないでしょうか。

ホクロをレーザーで除去すると、多くの場合、白っぽくやや凹んだ跡が残ります。
一方で、イボをこちらの動画で説明したシェービングで取ると全く跡を残さず治ります。
この違いはどこから生まれるのでしょうか。
なぜ、ケガや手術のあとにキズ跡が残るケースと残らないケースがあるのでしょうか。]

この違いを生むのは、皮膚がどの深さまで損傷しているかという点です。
皮膚は、表面の薄い表皮と、その下にある丈夫な真皮の2層から成り立っています。
さらに真皮は、浅い乳頭層と、より深い網状層の2つに分かれます。
皮膚の性質上、表面から乳頭層までの浅いキズ(およそ0.3mm程度)であれば、
跡を残さずに自然に治癒することが可能です。
部分的に失われた表皮基底膜が再び連続性を取り戻し、そこから元通り表皮が再生されるからです。

また、毛穴からも表皮は再生されます。
先ほど例に挙げたイボは「表皮病変」、つまり浅いのです。
そのため、シェービングで除去しても乳頭層までしか損傷が及ばず、
跡が残らないというわけです。
一方で、顔のホクロの多くは「ミーシャ型母斑」と呼ばれるタイプで、
皮膚の深い部分、真皮の網状層に病変があり真皮内母斑に分類されます。
これを除去すれば網状層が損傷するので、欠損は瘢痕組織、
つまりキズ跡組織によって埋められます。
こうして形成された皮膚は、テカテカとした質感を持ち、元の皮膚のようには戻りません。
つまり、レーザーであっても、どのような方法であっても、ホクロを取れば必ず跡が残る。
これは、医学の世界では広く知られている事実なのです。
3.「キズが残らない」という誤解と説明
レーザーで取ったけどキズが残っていない、という方もいます。
そういう症例写真を見ることもあるでしょう。

実は、ホクロにはキズが残らないタイプもあります。
境界母斑という、病変が浅い真皮乳頭層付近にとどまっているタイプです。
小さく平坦で、うまく熱をコントロールしながら除去すればほとんどキズを残しません。
仮にキズが残ったとしても小さく目立たないため、境界母斑に限っては私たちもレーザー治療を行うことがあります。
ただし、この境界母斑は見た目が小さく目立ちにくいことから、
「取りたい」と希望されるケースは多くありません。
さらに言えば、顔にできるホクロの中で境界母斑はかなり珍しいタイプなのです。

というのも首から上のホクロの多くは、先ほど説明した真皮内母斑、
つまり真皮の深い所に病変があるミーシャ型母斑です。
盛り上がっていたり、色が薄い場合もあります。
毛が生えていることもあり、大変目立つので、除去の希望が一番多いタイプでもあります。

ミーシャ型母斑をレーザーで除去すると、通常はキズが目立ちます。
それが目立たないとしたら、皮膚の浅い部分をレーザーで撫でただけで、
深い層のホクロ細胞がまったく取れていないケースか、残った瘢痕を患者さんがあまり気にしていないケースのどちらかです。
悪質なクリニックでは、術後写真を加工していることもあるかもしれません。
深い部分を取り残すと、数年後にまた盛り上がる可能性があります。
なお、キズ跡を気にするかどうかは個人差が大きく、あまり気にならない方もいます。

イ実際、美容クリニックが誇らしげに公開している症例写真の中には、
私の基準からすると、首をかしげたくなるほどキズ跡が目立つケースも多数あります。
そうしたクリニックでホクロ除去後にキズ跡について相談したところ
「これ以上レーザーを当てたらもっとキズが残る」と言われたり、
クレーマーのように扱われたという患者さんの話しも聞きます。
医師も患者も、キズ跡を気にするかどうかは人それぞれです。
しかし、私たちはキズの残り方の判断基準が厳しいからこそ、
ホクロ除去後のキズに悩む患者さんの気持ちには共感できるのです。
4.キズ跡とどう向き合うか?
「キズが残らないのであれば、気になるホクロを取りたいんだけど…」
これは、ホクロで悩む患者さんからよくいただくご相談です。

すでに説明したように、ホクロを取ればキズは必ず残ります。
大切なのは、その事実から目を背けることではなく、しっかり向き合うことです。
検討すべきなのは、「キズなしでホクロを取る」という非現実的な方法ではなく、
ホクロをいかに目立たないキズ跡に置き換えるかという、現実的な選択です。

そのためには、良いクリニック選び・良い医師選びが何よりも重要です。
術式もレーザーだけでなく、手術による切除も選択肢として検討すべきです。
私たちが行っている手術は、ホクロを切除した後に糸で縫い寄せる切除縫縮法です。
瘢痕組織の量を最小限に抑え、キズの向きを皺に合わせることで、目立ちにくく仕上げることが特徴です。詳しくは、こちらの動画をご覧ください。
「電気凝固」「くりぬき」「巾着縫合」は特に慎重に検討を!
手術といっても、電気凝固・くりぬき・巾着縫合は、キズ跡が非常に目立つことがあるので、
通常の形成外科医であれば、こうした術式を選択することはほとんどありません。
もし、このような方法を提案された場合は、医師の説明を良く聞いて慎重に検討して下さい。
医師の説明に不安や違和感を感じたら・・・
・絶対に即決しない
・持ち帰って相談を。家族、友人、複数医師など
キズが残るという事実を、治療前にどの程度説明するかは医師の姿勢にかかっています。
過当競争の美容外科の世界では、患者さんにとって不利な情報は曖昧になりがちです。
治療前の医師の説明に不安や違和感を感じたり、少しでも迷いがある場合は、絶対に即決してはいけません。
冷静になり、一度自宅に持ち帰って、お友達やご家族と相談してください。
できれば複数のクリニックで、医師の説明を聞いたうえで決定することをおすすめします。
ベテランカウンセラーの誘惑
・「キズは目立たないから心配ないですよ!」
・「私もやってますから大丈夫ですよ!」
・「今決めたらお得なキャンペーンが適用されますよ!」
間違っても
「大して目立たない」
「みんなやっている」
「今だけキャンペーン」
などといった美容クリニックのベテランカウンセラーの勧誘に流されないでください。
それらは無意識にキズ跡と向き合うことを避けようとするあなたの心の隙間につけ込もうとするささやきかもしれません。
残念ながら期待と違う結果に終わった場合、
強引な勧誘やキャンペーンに乗せられて決めてしまったときの後悔は、より深くなります。
一方で、自分自身の意思で選んだ術式、医師、タイミングであれば、
同じ結果も、より受け入れやすいものです。
5.医師と患者の認識のズレ

私のような形成外科医が言う「キズが残る」という表現には、
ミクロレベルで瘢痕組織が残るという意味合いが含まれます。
一方、患者さんの言う「キズが残る」は、
一般的には遠目でも目立つキズ跡を指すことが多いです。
私たちは経験上、患者さんとの認識のズレがあることを重々承知しています。
それでも、治療前の説明では「必ずキズが残る」と断言します。
「ホクロをキレイに取りたいのにキズが残るなんて、バカにしている!」と
患者さんに叱られたこともありますが、
患者さんがそこまでシビアなものを求めていると分かっていても、
キズ跡に関しては決して誤魔化したりぼやかしたりはしません。

美容外科医は知りませんが、少なくとも私たち形成外科医はこのように教育されています。
理論的には、最終的にどう見えるにせよ、必ず瘢痕を残すという事実があるからです。
また、「キズ跡が目立つかどうか」を判断するのは医師ではなく、患者さん自身です。
キズに向き合うのは患者さん本人であり、その評価は主観によって大きく異なります。
だからこそ、私たちはキズについて明確に、いや場合によってはやや誇張して説明し、
それを受け入れられるかどうかを、患者さんに慎重に判断してもらいたいと考えています。

患者さんとのお話の中で、キズの残り方に対する要求があまりに高すぎると感じる場合、
治療をお断りしたり、延期することも珍しくありません。
ただ、これは治療に自信がないからではありません。
むしろ、患者さん自身がキズと向き合う準備や覚悟ができていないと考えるからです。
そのような患者さんに対して、説明を変えたり、決断を急がせることは決してありません。
迷いがある時→ホクロを取らないという選択肢も検討を!
ホクロ自体は、誰にでもあるごく自然なものです。
キズ跡よりも、患者さん自身や周囲が受け入れやすいものでもあります。
しかし、一度キズが気になり始めると、鏡を見るたびに後悔し、
向き合うことが辛くなることもあります。
少しでも迷いがある場合は、ホクロを取らないという選択肢も検討すべきでしょう。
ご自身がキズ跡と向き合う覚悟があるかどうか、
今一度よく熟考してください。
理解や覚悟が不十分なまま治療を受けると、
結果に深く後悔することになりかねません。
6.まとめ:レーザー後にキズ跡が残ってしまったら
今回は、レーザー後のキズ跡について詳しく説明しました。
レーザーでホクロを取ると必ずキズが残る、ということがご理解いただけたと思います。

冒頭でもお話ししたように、
私たちは他院でのホクロ除去後のキズ跡や再発に対するリカバリー手術を数多く手がけています。
多くの患者さんは、最初は手術に抵抗がありレーザーを選択されますが、
期待を裏切られ、レーザーへの信頼を失っていることが少なくありません。
その後、全員が手術によるリカバリーを希望され、
「次にホクロを取るとしたら、手術が良い」とおっしゃっていただくことがほとんどです。

残念ながら、ホクロはレーザーで取るのが一番キレイになるという考え方が支配的です。
そんな中、当院はほぼ全例を手術で除去しており、業界では少数派のクリニックです。
私たちは、手術のほうが常にキレイなキズに仕上がるという信念を持っているからです。
ホクロ治療で迷われた際には、ホクロ除去後にキズ跡が残った場合の選択肢のひとつとして、
ぜひ私たちの方法をご検討ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回以降もほくろの誤解除去の誤解をシリーズで取り上げていきますので、どうぞ次回の更新を楽しみにお待ちください。
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【記事監修・執筆】
医師 医学博士 院長 野田 弘二郎
- 日本形成外科学会専門医
- 皮膚腫瘍外科指導専門医
- プロネイリスト
- オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
- パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
- 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員
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