再発!レーザーではなぜホクロが取れないのか?【ホクロ治療の誤解シリーズ 第6回】
- 2025.12.09
神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
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当院には連日たくさんのホクロレーザー後トラブルのご相談が寄せられます。
相談内容は主に二つ、「レーザー後のキズ跡問題」と、「ホクロが取れない問題」です。
今回はホクロ除去の誤解シリーズ第6回として、
「レーザーではなぜ盛り上がるホクロが取れないのか?」というテーマでお話しします。
なお、レーザー後のキズ跡問題については、 こちらの動画で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
さて、本題である「ホクロが取れない問題」ですが、
相談数はキズ跡問題の十倍以上と圧倒的に多く、こちらのほうが真の大問題と言えます。
それでは、ホクロ治療の標準とされるレーザーで、
なぜこのようなことが頻繁に起きてしまうのでしょうか?
そこには、皆さんが想像もしない
美容医療業界の“闇”
とも言える驚きの理由があるのです。
実は患者さんだけでなく、医師の間にまで蔓延している
『謎のレーザー信仰』
今回は、形成外科専門医の立場から鋭く切り込んでみたいと思います。
ぜひ最後までご覧いただき、もし私の考えに共感していただけましたら、
ご家族やお友達と共有していただけると嬉しく思います。
7.おわりに。レーザーでホクロが取れなくても諦めないでください
1.「ホクロが取れない問題」とは何か?
レーザー後トラブルの多くを占める「ホクロが取れない問題」ですが、
YouTubeで検索しても、このテーマを詳しく解説した動画はほとんど見当たりません。
そのため、実際にどんなことが起きているのか、イメージしにくい方も多いと思います。
ここでは、「ホクロが取れない問題」とは何なのか、実際の症例を交えながらご紹介します。







少なくない費用をかけて治療したのに、これではがっかりしてしまいますよね。
実は、ホクロが取れないケースは決して珍しいものではありません。
私たちのような小さなクリニックでさえ、
年間に200人以上の方がこの悩みで相談に来られます。
さらに、そのうちの約3分の1は、他院でレーザー治療後の再発なのです。
この数字を見るだけでも、状況の深刻さがわかると思います。
2.保証付きなら本当に安心か?
多くのクリニックでは、ホクロが取れなかった時の保証がついています。
5年以内といった所もあれば、永久保証といったものまであります。
「もし取れなくても保証付だったら…」と考えてしまいがちですが、
しかし、それで本当に安心と言えるのでしょうか?
ホクロが取れない問題で私のもとに相談に見える患者さんの中には、
「保証付きだったが、何度レーザーをあてても一向に取れないので結局諦めた」
という方が大勢いらっしゃるのです。

たとえ無償の保証があったとしても、
実際には、通院の手間をかけ、毎回の麻酔注射の痛みに耐え、
ダウンタイムの不便さを被り、治療の度に赤みが退くのを何ヶ月も待つ。
こうした負担は、患者さんにとって決して小さくありません。
そのため、何度もレーザーを繰り返すうちに限界を感じ、
「もう続けられない」と見切りをつけてしまう方も多くいらっしゃいます。
さらに中には、保証期間内であるにもかかわらず、
医師から「これ以上照射するとキズが残るのでできません」と
治療の継続を断られてしまったケースさえあるのです。
このような実情を踏まえると、
“保証があるから安心”とは必ずしも言い切れないのです。
3.レーザーでホクロが取れない原因とは
では、なぜ盛り上がるホクロはレーザーで取れないのでしょうか?
鍵になるのはホクロの持つ「圧倒的な厚みと深さ」です。

写真は、顔に多い「ミーシャ型母斑」という盛り上がったタイプのホクロで、
当院で標準的な手術により除去した標本です。
横から断面を見ると、最も深い部分は皮膚の一番底にまで達しています。
実際、ホクロは一般にイメージされるよりもずっと深く、全体の厚みは、膨らんで見える部分の2〜3倍の深さがあります。
また、盛り上がったホクロから太い毛が生えていることがありますが、
その毛根はホクロよりさらに深く、皮下脂肪にまで及びます。
毛穴の壁にもホクロ細胞が存在するため、毛穴部分だけでも取り残すと、
そこからも再発してしまうのです。
つまり、このような盛り上がったホクロを完全に取り除くためには、
皮下脂肪に届く深さまで、丁寧に取り進める必要があるということです。
4.レーザーでホクロ細胞を取り残しやすい3つの理由
では、手術では問題なく取り除ける深いホクロが、
なぜ、レーザーだと取り残しやすいのでしょうか?
それには3つの理由があります。

①摘出手順における確実性の欠如

レーザー治療では、ホクロを“蒸散”させながら、
表面から奥へ向かって順次掘り進めていきます。
ホクロの深い部分にある細胞は色素を持たず、たとえホクロの一部分であっても黒く見えません。
そのため、医師は照射している部分が「正常な真皮」なのか「ホクロ細胞」なのかを区別できないのです。この確実性の欠如により取り残しが起きやすくなります。

一方、手術では皮膚を脂肪層までしっかり切開し、まずホクロの最も深い部分を確認します。
そのうえで、ホクロ全体を一塊として掘り起こすように取り除くため、確実に切除することができるのです。
②2次治癒(瘢痕治癒)

2つ目の理由は、レーザーによるホクロ除去は2次治癒するという性質にあります。
2次治癒とは除去により生じた欠損が、瘢痕組織によって埋められて治癒する治り方です。
レーザーでは、この瘢痕治癒した跡が凹んでしまうことがよくあります。
また、2次治癒は上皮化に時間がかかることと、真皮深層が損傷することにより
肥厚性瘢痕が発生して、逆にキズが盛り上がることもあります。
こうしたトラブルを避けたいという心理が働くと、深い部分でホクロ細胞の処理が甘くなり取り残しを生じます。

なお、手術の場合1次治癒といって、欠損を糸で縫い縮めますので凹みません。
レーザーと手術の治癒形態の違いについては、こちらの動画で詳しく説明しています。
③周辺組織に火傷が波及するリスク
3つ目の理由は「熱」です。
ホクロの深い部分までレーザーで焼こうとすると、組織の内部に熱がこもり、
ホクロの範囲より広く火傷を起こしてしまうリスクがあります。
治療後に「ホクロよりキズ跡のほうが大きくなってしまった」というケースは、まさにこの熱の影響によるものです。

このリスクを避けようとすると、どうしても浅い部分だけを処理してしまい、
深部のホクロ細胞を残してしまいがちです。
一方、手術で使用するメスは熱を伴わないため、
どれだけ深く切っても火傷を起こすことはありません。
ここまで、ホクロ細胞が取り残される3つの理由を説明しました。
このような取り残しがあると、治療直後は一見キレイに取れたように見えても、
数か月から数年後に再び盛り上がって再発します。
ホクロの数十年にわたる自然史を考えれば、ある意味当然の結果とも言えるのです。
なお、完全に取れなくても、治療後に紫外線を避ければ再発しないと説明しているYoutube動画がありました。
ホクロの発生原因と再発原因とを混同させるような表現は、フェアではないと感じました。

再発は、紫外線の刺激というよりも、ホクロ細胞の取り残しが原因です。
実際には、紫外線が当たらなくても、取り残されたホクロ細胞は増殖し、やがて再発してしまうのです。
紫外線の影響で同じ場所に新しいホクロができた…という説明は、
もはや詭弁に過ぎません。忌憚なく言わせていただければ、
再発の原因はホクロを取り残してしまう医師の技術の問題であり、
決して日焼け対策を怠った患者さんのせいではないのです。
5.エキスパートのスキルがあればホクロは完全にとれるのか?
先ほど、再発の原因は医師のスキルにあると申し上げましたが、
ではレーザーの“名医”であれば、盛り上がったホクロを完全に取り除けるのでしょうか。
実のところ、これも大いに疑問です。
というのも、私が日々診ている「ホクロが取れない問題」の中には、
“予約が取れないほど人気の医師” や “多数の著書を出版している著名な医師” が治療したケースも複数含まれているからです。

エキスパートと呼ばれる医師の治療について、患者さんから詳しく話を伺うと、非常に興味深い点が見えてきます。

まず、炭酸ガスレーザーなどでホクロの盛り上がった部分を削り、表面を平らにする。
次に、Qスイッチレーザーやピコレーザーといった「色素選択性レーザー」を、削った部分に繰り返し照射していく、という手法のようです。
確かに、この方法であれば真皮の深い層(真皮網状層)にまで
大きなダメージを与えないため、キズ跡は残りにくいでしょう。
しかし、色素選択性レーザーの弱点は「到達できる深さが限られている」ことです。
せいぜい数ミリ程度で頭打ちになってしまい、ホクロの“厚み”に対しては不十分です。
そのため、深部のホクロ細胞はどうしても生き残ります。
さらに厄介なのは、色素選択性レーザーが“色素”だけを標的にする点です。
そのため周囲の組織にはほとんど影響がありませんが、裏を返せば、
同じホクロ細胞でも 色素を持たない細胞には全く効かないのです。
そして実は、ホクロの深い層にある母斑細胞ほど色素をほとんど作らない性質があります。
この事実を踏まえると、
表面を炭酸ガスレーザーで削り、その上から色素選択性レーザーを照射する方法では、
深部に潜む母斑細胞を完全に破壊することはできない、というわけです。
こうした患者さんを診察するたびに、レーザー治療の限界を見る思いがします。
もちろん、うまくいくケースもあるのでしょう。
しかし、たとえレーザーのエキスパートであっても、
ホクロを「完全に取り除く」ことよりも、
「キズが残るのを避けたい」という気持ちが先行しているのが見て取れるからです。
6.美容医療業界の闇と謎のレーザー信仰
私たち、形成外科医の治療戦略は、

まず病変をしっかり取り切ったうえで、最適な再建方法を検討する。
これは形成外科では当たり前の“分離思考”です。
先天異常や悪性腫瘍などの形成外科手術において、
再建の都合に合わせて欠損範囲を変えることなどありえません。
それだけに、
「キズが残るくらいなら、ホクロ細胞が多少残っても仕方ない」
「再発したらまたレーザーで治療すればいい」
といった考え方には、どうしても強い違和感を覚えるのです。

実のところ、「ホクロが取れない問題」ではなく、
むしろ「ホクロを取っていない問題」と呼ぶべきなのかもしれません。
一般には知られていない、『美容医療業界の闇』のひとつです。
そして患者さん側にも、
「少し薄くなったからいい」
「キズになるよりはまし」
と、ホクロが取れていない状態を、ある程度受け入れてしまっている方も少なくありません。この現状は、医師と患者の両者に蔓延する『謎のレーザー信仰』と言っていいほどです。
私はレーザーによるホクロ除去を完全に否定するつもりはありません。
ただ、レーザー治療を検討していて「ホクロが取れない問題」で悩みたくないのであれば、治療前にぜひ、担当医へ次の質問をぶつけてみてください。

「何回治療したら、ホクロ細胞を『完全に』取り除けますか?」
もし医師がこの質問に自信を持って明確に答えられなかったり、
「保証があるから大丈夫です」と話をすり替えたり、
さらには手術への恐怖を強調して論点をずらそうとした場合は、
その治療を受けるべきかどうか、もう一度慎重に考える必要があります。
ちなみに参考までに、私ならこう即答します。
「1回の手術で、完全に取り除けます。」
7.おわりに。レーザーでホクロが取れなくても諦めないでください
ホクロが取れない問題で当院へ相談に来られる方の中には、手術に対するネガティブなイメージや恐怖心から、別の治療に次々と手を出してしまった方も少なくありません。

例えば、ダーマペン、プラズマ、Qスイッチレーザー、ピコレーザー、IPL、ステロイド注射、サプリメントや化粧品など…、
さまざまな治療を試される方がいます。
しかし、その多くはホクロに効果が期待できないものばかりです。
中には高額な治療も含まれており、総額100万円以上を費やしたにもかかわらず、結局ホクロは全く取れなかったという、非常に気の毒なケースもありました。

でも諦めないでください。手術という最もシンプルかつ確実な方法があるからです。
当院で行っているホクロの手術治療についてはこちらの動画で詳しく説明しています。ぜひご視聴下さい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
どうぞ、次回の更新を楽しみにお待ちください。
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尚、神楽坂肌と爪のクリニックで治療をご希望の方は、当院ホームページの問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。ご連絡、ご相談、お待ちしています。
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【記事監修・執筆】
医師 医学博士 院長 野田 弘二郎
- 日本形成外科学会専門医
- 皮膚腫瘍外科指導専門医
- プロネイリスト
- オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
- パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
- 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員
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