ほくろ除去で危ない部位はココ!【ほくろ除去よくある誤解シリーズ1】
- 2025.07.17
神楽坂肌と爪のクリニック』の院長、野田弘二郎です。
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さて、今回のテーマは皆さんにも身近なほくろです。
当院では、ほくろのご相談が非常に多く、
ほくろの手術をしない日はほとんどありません。

そうした日常診療で感じるのは、患者さんのほぼ全員が
「ほくろ除去に関してなんらかの誤解をされている」
ということです。たとえば
「ほくろは消せる」
「レーザーは痛みもなく、跡も残らない」
「悪性のほくろは盛り上がる」
といった誤解です。
私たちは治療の前に、こうした誤解が解けるまで時間をかけて
丁寧に説明するように心がけています。
しかし、そうした誤解は非常に種類が多く、内容も多岐に渡ります。
そこで「ほくろ除去に関するよくある誤解と注意すべき点」を
シリーズでお伝えしていくことにしました。
今回は、第1回として、ほくろ除去で気をつけたい「部位」についてお話しします。

ほくろは体のどこにでもできますが「どの場所でも同じ」と考えていませんか?
じつはこれが最初の誤解です。
ほくろには、リスクが高く慎重に考えなければならない場所、
傷跡を残しやすい場所そして決して除去してはいけない場所があるんです。
これを知らずに手術を受けると、本当に後悔してしまうかもしれません。
ぜひ最後までご覧いただき、お友達やご家族とも共有していただけると嬉しく思います。
首から上のほくろの特徴
じつはほくろは首から上と下とでは、その特徴や除去の注意点が大きく異なります。
まず、首から上、主に顔のほくろについて説明します。

顔は衣服で覆われないため、紫外線の影響を受けやすく、ほくろができやすい部位です。
人目につきやすく、ほくろが気になりやすい場所でもありますよね。
そのため、当院で除去を希望されるほくろの90%以上が、顔に集中しています。

傷跡も目立ちやすいので、
当然「キレイに取ってほしい」という患者さんの要求レベルも高い部位です。
しかしじつは「顔のほくろは傷跡が目立ちやすい」というのも、ある種の誤解なんです。
顔は血流が非常に良い場所なので、適切に除去すれば傷跡はかなり目立たなくなります。
顔は、ほくろ除去の満足度が最も高い部位でもあるんです。
顔のほくろ除去で注意すべきポイント
顔には、まぶたや鼻などパーツごとに異なる特性があり、
それぞれ注意すべきポイントも変わってきます。
知識や経験が不十分なまま施術を行うと、傷跡が目立つだけでなく、
神経損傷や機能障害などの悲惨な合併症を起こすリスクもあるのです。

つまり、顔のほくろ除去は、施術する医師の技術や経験によって、
仕上がりに大きな差が出やすい部位だと言えます。
だからこそ、信頼できるクリニック選びがとても大切です。
では次に、よくご相談をいただく顔の部位ごとに、
ほくろ除去の注意点やリスクについて詳しく見ていきましょう。
【唇】
唇は狭い領域ですが、大きなほくろができることがよくあります。



専門的な話になりますが顔はまぶた、鼻などの各パーツは
「エステティックユニット」という領域に区分されます。

きれいに仕上げるためには、「エステティックユニット」と呼ばれる
顔の自然な区切りをまたがないように傷をつけることがとても大切です。
唇は皮膚の伸びがよく、縫合には適していますが、ほくろ自体が大きいケースも多く、
どうしても傷がエステティックユニットを越えてしまいやすい部位です。
さらに、唇は顔の中でも特に目立つ場所なので、できるだけ傷を短く、
目立たなく仕上げる工夫が欠かせません。
実際、唇の大きなほくろはきれいに除去するのが特に難しく、
他のクリニックで治療を断られた方が、当院に相談に来られるケースも少なくありません。




またまた専門的な話になりますが、当院では固定された鼻翼(びよく)や、
唇の赤い部との境にあるホワイトロールという皮膚の盛り上がりを利用することで
小さなキズで仕上げています。

唇は、術後に傷の端が盛り上がる「ドッグイヤー変形」と呼ばれる状態が残ったとしても、
時間とともに自然になじみ、あまり目立たなくなることが多い部位です。
ただし、唇ならではの注意点として、会話や食事などで大きく口を開けるたびに
傷に引っ張る力(緊張)がかかりやすい、という特徴があります。
このため、術後のケアや過ごし方にも少し工夫が必要です。


緊張により術後に徐々に傷の幅が広がってしまう可能性があるので、
皮下の処理をしっかりすることと、
術後1年くらいは大きな口を開けないようにすることが重要です。
【鼻】
鼻とその周辺のほくろもしばしば大きくなり、
レーザー後に目立つキズになってしまい相談に見える方もいます。




鼻のエステティックユニットは、小鼻や鼻先と小さなユニットになるので、
そこに大きなほくろがある場合、手術の難易度は非常に高くなります。




鼻の皮膚は硬くてあまり伸びず、しかもデリケートなため、
大きなほくろを取る際には注意が必要です。
ほくろが大きすぎると、傷を無理に縫い合わせることが難しくなります。
無理に縫合してしまうと、小鼻が片方だけ引き上がったり、
鼻先が不自然に上を向いてしまうといった、見た目の変化が起こる可能性もあるのです。


そのため鼻の手術は特に難しく、ほくろが大きすぎる場合は、無理に縫い合わせず、
傷を自然にふさがせる『くりぬき法』が選ばれることもあります。
【額と顎】
額と顎もまた大きくなるほくろが多いです。




どちらも広いエリアで皮膚にも余裕があるため高いスキルは要求されず、
キズがキレイになりやすい部位です。丁寧に治療すれば良い結果が得られるでしょう。
【頬】
頬は半球面のような形をしているため、
ほくろを切除し縫い縮める際に、傷が長くなりがちです。




ここは手術のデザインの工夫でうまくカバーする必要があります。
【鼻の下】
鼻の下は、糸の跡が残りやすかったり
傷跡が盛り上がったりすることがあるデリケートな領域です。


丁寧な手術をすることでこのトラブルをかなり避けることが可能です。
【まぶた】
まぶたのほくろの相談は多くはありませんが、
ご本人にとっても他人にとっても目立ちやすい場所です。
機能的には、ほくろが大きくなると視野を遮ることがありますし、



まつげの生え際や、まぶたの内側にほくろができることもあり、
二重のラインが乱れてしまう場合もあります。
感覚がとても繊細なため、除去後に引きつれを感じることがあります。
傷跡が目立ちやすく、わずかな左右差でも気になるでしょう。
まぶたの皮膚は非常に薄く、伸びやすい反面、あまり縮まないのも特徴です。


そのため、まぶたは腫れやすく、内出血や術後のデコボコも目立ちやすい部位です。
皮膚にはある程度の余裕がありますが、大きなほくろを無理に取ると、
最悪の場合、まぶたが閉じなくなることもあります。
特に下まぶたでは、「あかんべー」のようにめくれた状態になり、
後から修正手術が必要になることもあります。
一方で、まぶたは血流が非常に良く、傷の治りも早いため、
合併症を防ぐためにダウンタイムは長くなりますが、
くりぬき法の方が仕上がりがきれいになるケースもあります。
【眉】
眉とその周辺は、ほくろが大きく盛り上がりやすい部位です。
いわゆる“寅さんぼくろ”ですね。


眉の中にあるほくろを除去する際は、
毛根を傷つけて一部の眉毛が抜けてしまうことがあります。
特にレーザーによる除去では、
眉毛の脱毛は避けられないと考えておいたほうがよいでしょう。




手術の場合は毛根を傷つけないよう注意深く行いますが、
それでも多少脱毛することがあります。
【こめかみ】

こめかみは、顔面神経の枝が皮膚の浅い場所を通っているため、
深いほくろを除去する際に神経を傷つけるリスクがあります。

もし神経が傷ついてしまうと、眉の高さに左右差が出てしまいます。
この場合、時間がたっても自然に元に戻ることは期待できません。
そのため、顔面神経の損傷は絶対に避けなければならない重大な合併症です。
【頭皮】
頭皮はのほくろは髪の毛に覆われることが多く目立ちませんが、
指に触れることが気になる方もいます。


頭皮は硬くて伸びが悪いうえに、真皮が薄く、皮下縫合が難しい部位です。
そのため、大きなほくろを取る際には特に注意が必要です。
さらに、太い血管が多く通っているため出血量が多くなりがちで、
髪の毛の中での手術は細かい操作・忍耐力が求められます。
頭皮もまた、難易度の高い部位と言えるでしょう。
ほくろ除去:鎖骨から下の部位(肩から恥骨部まで)
次に、鎖骨から下の部位についてお話ししましょう。

顔に比べると、このエリアにできるほくろは少なく、
多くは衣服に隠れるため、除去手術全体の1割以下にとどまります。
それでも、肘や膝から先は服から露出しやすく、
「見た目が気になって服選びに悩む」という方も少なくありません。
襟元や袖口、下着のライン、アクセサリーがこすれて、不快に感じることもあります。

スポーツや特定の動作の際に、ほくろが邪魔になったり、不快感や痛みを感じるケースも。特に足の裏のほくろについては、「癌ではないか」と不安に思う方も多いです。

鎖骨より下の部位は外から見えにくいため、
「ほくろ除去の傷跡は気にならない」と思われがちです。
しかしこれは誤解で、顔ほど血流が良くないため、
傷が思ったほどきれいに治らないことが多いのです。
むしろ、傷跡のほうが気になったり、
衣服とこすれて不快に感じることもあります。
鎖骨から下の領域は治療満足度が低い傾向があるため、
美容目的での除去は慎重に検討する必要があります。
ここからは、部位ごとに詳しくご説明します。
【肩】
肩のほくろ除去では傷跡にブラジャーの紐や
肩掛けカバンのストラップが当たって痛みを感じることがあります。

また肩の外側にあたる三角筋部や肩甲骨部では、ケロイドが生じやすい傾向があります。

<ケロイドとは?>――――――――――――――――――――――――――
ここでケロイドについて簡単に説明します。
ケロイドは傷跡が赤く盛り上がった状態です。


元のほくろより見た目が悪く、しばしばほくろより大きくなることがあります。
痛みやかゆみに悩まされ、簡単には治らず、長期間の治療が必要です。
そのため、たとえケロイドが普段は人目に触れない場所でも、
精神的なストレスは非常に大きく、ほくろ除去を後悔するケースも少なくありません。
病気の治療、例えば皮膚の悪性腫瘍の場合は理解されやすいですが、
美容目的の手術後にケロイドができるのは絶対に避けたいトラブルです。
体質的にケロイドができやすい人もいますが、
そうでない方でもケロイドができやすい部位があります。
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ケロイドになりやすいその他の部位

肩以外にも、ケロイドになりやすい部位として以下の場所があります。
【胸骨部(きょうこつぶ)】
胸骨は、両方の鎖骨の間からみぞおちにかけて胸の中央にあるネクタイ状の骨です。
この部分の皮膚に傷をつけるとケロイドになりやすいので、美容目的のほくろ除去は避けるべきです。
【へその下、恥骨部】
ほくろはあまりできない場所ですが、ケロイドになりやすい場所なので要注意です。
ほくろ除去:鎖骨から下の部位(腰から足裏まで)
【腰(腸骨部)】

腰(腸骨部)では、腰骨の出っ張り部分のほくろを取ると、
傷跡に下着やズボンが当たって不快感が出ることがあります。
【背中】
背中のほくろは皮膚から盛り上がることが多いです。
あまり人目に触れる部位ではありませんが、結婚式の直前に来院されて、
背中の大きく開いたドレスを着たいから除去したいという方がいらっしゃいます。

このように美容的な意味合いも大きい部位ですが、血流が良くないうえ、
思った以上に緊張がかかるため、
顔ほど傷がきれいに治らない点に注意が必要です。

また、先ほど述べたように、背中の肩や肩甲骨周辺でもケロイドが発生することがあります。
【四肢(手足)】

四肢もまた血流が良くないため、傷が期待したほどキレイにならないことがよくあります。
特に関節部分は、曲げ伸ばしによって皮膚が引っ張られたり、縮められたりする場所なので、拘縮(こうしゅく)といって、関節に引きつれが起こることがあります。
傷が肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)* やケロイドになりやすいことがあります。
関節部分でなくても、皮膚の短い方向に余裕がないため、
大きなほくろを除去するのが難しい場合があります。



*肥厚性瘢痕:傷跡が赤く盛り上がり、通常の傷よりも厚く硬くなる状態のことです。
【足裏】
ここも非常に誤解の多い部位です。
それは「足裏のほくろは悪性黒色腫であることが多い」という誤解です。

確かに、日本人の悪性黒色腫は統計的に足裏にできる割合が高いのは事実です。
しかし、「足裏のほくろが悪性黒色腫になりやすい」という意味ではまったく異なります。
そもそも日本人の悪性黒色腫は希少がんの一つで、
その発症頻度は大腸がんの約100分の1にすぎません。


私も医師として30年以上、多くの患者さんの足裏のほくろを除去してきましたが、
それが悪性黒色腫だった例は、一度もありません。
一方、足裏、特にかかとなどの荷重部位では、
ほくろ除去後に傷跡が魚の目のようになり、痛みが出る合併症のリスクがあります。

悪性黒色腫が心配な場合は、安易に除去せず、
拡大鏡を使ったダーモスコピー検査で詳しく観察することをおすすめします。
まとめ
今回は、場所によるほくろ除去の誤解と注意点についてお話ししました。
ほくろ除去に関する誤解は、今回取り上げた部位による違いだけでなく、
レーザーや手術などの除去法、傷跡の経過、良性・悪性の違い、
保険の取り扱いなど、多岐にわたります。
次回以降もほくろの誤解除去の誤解をシリーズで取り上げていきますので、
どうぞ次回の更新を楽しみにお待ちください。
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【記事監修・執筆】
医師 医学博士 院長 野田 弘二郎
- 日本形成外科学会専門医
- 皮膚腫瘍外科指導専門医
- プロネイリスト
- ミラドライ公式認定医
- オールアバウト公認 肌と爪の健康ガイド
- パリ第7大学ドゥニ・ディドロ微少外科手術ディプロマ取得
- 日本形成外科学会、国際形成外科学会、日本美容外科学会、日本皮膚外科学会、日本美容医療協会会員